ホーチミン市6区のレクアンスン(Le Quang Sung)通りの路上は、盛衰を経ながら50年以上にわたり「ビンロウジ(檳榔子、ヤシ科植物ビンロウ(檳榔)の種子)」を専門に売る市内最大かつ唯一の場所として知られている。
(C) vnexpress |
(C) vnexpress |
半世紀以上にわたり存在する「ビンロウジ市場」。毎日、深夜から明け方にかけてビンロウジを運ぶトラックが市場にやってくる。時を経て、現在この通りでビンロウジを売っているのはわずか15人ほどしかいない。売り手のほとんどが50歳から80歳くらいの女性たちだ。
ベトナムでビンロウジは、刻んだりすりつぶしたりしたものをキンマ(コショウ科植物)の葉にくるんで少量の石灰と一緒に噛む嗜好品として、また夫婦の象徴とされることから婚約・結婚の儀式で新郎が新婦の家へ贈るものとしても使われる。
ホーチミン市のビンロウジ市場で一番の古株は、同市ホックモン郡在住のサウ・レンさん(女性・83歳)。ここでビンロウジを売って60年余りになる。毎日、ホックモン郡バーディエム村の自宅からバスに乗ってこの通りまで来て、夜に帰宅する。
「私が幼い頃、この通りはビンロウジを売り買いする人で賑わっていました。当時この通りは『チュオンタンブウ(Truong Tan Buu)通り』という名前で、何十もの店が並んでいました。スパイシーな香りが特徴的な、ホックモン郡バーディエム村のビンロウジを主に売っていました」とサウ・レンさん。