髪を切っている時、ドン首相は故郷のこと、家族のこと、社会のことなど、たくさんの質問をハン氏に投げかけた。あるときはこんな質問をされた。「君のご両親は家畜をたくさん飼っているかね?」ハン氏は「私の家族はもうすぐ子どもを産むメス豚を1匹と、鶏をたくさん飼っています」と答えた。驚いたことに、次に会ったとき、首相はそのことをちゃんと覚えていて、「君の家の豚は何匹子どもを産んだかね?」と尋ねられたという。
(C) Vnexpress, ファム・ヴァン・ハン氏 |
ドン首相のあと、ハン氏はトン・ドゥック・タン国家主席の散髪を担当した。主席はとても穏やかで、同胞のことを気遣っている印象を受けたという。「ある雨の日のことです。主席の髪を切っていたとき、主席はどんよりとした空を見上げて悲しそうに、こんな天候では増水や洪水がおこって同胞たちの食料が不足してしまうだろうと嘆かれていました」
主席の信頼を受けたハン氏は、その後も散髪の度に呼ばれ続けた。「晩年の主席のことを思うと胸が痛みます。疲労し、高齢のため体力も衰え、歩くこともままならない状態で病床についていました。それでも髪型はきちんとしておかないと気がすまなかったのでしょう。髪を切るときには誰かに手伝ってもらって、体を回転させたり、起こしたりして、散髪を受けていました」