- 一審有罪判決の元保健相ら12被告が控訴
- 元保健相は3.4億円収賄で一審禁固18年
- ベトアー社も控訴、利益没収撤回求める
ベトナム人民軍の軍医学院と地場ベトアー・テクノロジー・コーポレーション(Viet A Technology Corporation、ホーチミン市)から成るコンソーシアムによる新型コロナウイルス検査キットの研究開発(R&D)、評価、流通認可、価格設定、購買調達に関する汚職事件で、1月中旬にハノイ市人民裁判所から有罪判決を受けた被告37人中12人が控訴し減刑を求めた。
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この12人には、主犯格のベトアー元社長のファン・クオック・ベト被告(男・44歳)、元保健相のグエン・タイン・ロン被告(男・58歳)も含まれる。一審裁判では、ベト被告が贈賄罪と入札規定に違反し甚大な被害をもたらした罪で禁固29年、ロン被告は収賄罪で禁固18年の判決を言い渡された。同事件では、ロン被告が225万USD(約3億4000万円)の賄賂を受け取り、収賄額が最も大きかった。
また、ベトアーも法人として控訴を決めた。同事件で起訴されなかった組織・個人に対する検査キット販売で得た利益も不正利益とみなされて没収との決定を受けたが、これを不服として見直しを求め、同社とその系列企業の銀行口座の凍結・取引制限を解除するよう求めている。
同事件は、ベトアーが国の研究(国防省傘下の軍医学院が展開し、科学技術省が承認して資金拠出する国家レベルの研究)の結果を違法に使用して検査キットの製造販売を実施し、検査キットの製造に用いられる原材料や機械設備の価格を水増しする形で生産コストを詐称して、不当な高値で販売したというもの。
同社は2020年4月に保健省から流通認可を取得。2020年から2021年にかけて製品を販売し、1兆2350億VND(約75億円)の不正利益を獲得。不当価格に同意した見返りとして、医療管轄機関の要職をはじめとする関連機関の複数幹部に賄賂を渡していた。
ベトナム共産党政治局傘下の腐敗防止中央指導委員会は、事件を重く見ており、捜査を直接監視してきた。同委員会の指導方針に基づき、私利目的で犯罪を首謀・主導・実行した者は厳罰に処すが、上司の命令に従っただけで私利私欲を持たなかった者に対しては、刑事責任と民事責任の免除が考慮されることになっている。
裁判にかけられた被告38人のうち、東南部地方ビンズオン省保健局傘下の疾病管制センター(CDCビンズオン)のグエン・タイン・ザイン元所長のみが刑事責任を免れた。裁判所はザイン元所長について、入札既定の違反があったものの、同氏がベトアーからの賄賂を断固として受け取らず、部下に対しても賄賂を受け取らないよう指導していたことを考慮した。
なお、上述の事件も含め、ベトアーによる新型コロナ検査キット関連の一連汚職事件では、中央・地方レベルの捜査機関がこれまでに計30件以上の刑事事件を立件している。