モロッコでこのほど開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産保護条約第17回政府間委員会で、ベトナムのチャム族の陶器作りが「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表(緊急保護一覧表)」に登録された。
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チャム族の陶器は、主に家庭用と儀式用、また美術品として作られ、甕、鍋、盆、瓶などの種類がある。制作するのは女性だ。粘土は南中部沿岸地方ニントゥアン省のバウチュック村とスアンクアン村を流れるクアオ川(song Quao)沿いの畑から採取したものを使用する。
制作時には竹で削って器壁を薄くしたり、貝殻や布などでこすって表面をなめらかにしたりする。また、ろくろを使う代わりに自身が台の周りを移動して成形する。陶器は釉薬をかけて乾燥させ、約800度の温度で7~8時間、薪とわらを使って屋外で焼成する。
文化スポーツ観光省傘下の文化遺産局の担当者によると、チャム族の陶器作りの知識と技術は家族の中で世代を超えて受け継がれている。また、陶器作りは、チャム族の女性の生産労働や社会生活における交流、子供たちへの職業教育、収入の増加、社会における女性の役割の向上などにも貢献している。遺産を保護することは、ベトナムのチャム族の文化的アイデンティティを維持することにもつながる。
しかし、陶芸村の職人や跡継ぎの数が減少しているため、陶器作りは消滅の危機に瀕している。ベテランの職人はすでに高齢で、若い世代はあまり関心を示さないからだ。また、都市化が伝統工芸村の空間や原料の入手などにも影響を及ぼしている。
こうした中、文化遺産局のレ・ティ・トゥー・ヒエン局長は、今後チャム族の陶器作りの価値を保護するための措置を講じると明らかにした。2023年から2026年までの4年間、トレーニングや資料化、原料の入手にかかる問題の解決、職人の持続可能な生計に関する問題の解決などに取り組む計画だ。
なお、これまでに登録されたベトナムの無形文化遺産は、チャム族の陶器づくりのほか、◇フエ宮廷雅楽、◇ベトナム中央高原におけるゴングの文化的空間、◇北部紅河デルタ地方バクニン省の伝統歌謡「クアンホ(Quan ho)」、◇伝統歌謡「カーチュー(Ca tru)」、◇伝統歌謡「ハット・ソアン(Hat xoan)」、◇フン王信仰、◇タイ(Tay)族、ヌン(Nung)族、タイ(Thai)族の民謡テン(Then)の儀式、◇中部の民俗遊び「バイチョイ(Bai choi)」、◇タイ(Thai)族の民族舞踊「ソエタイ(Xoe Thai)」など計15件となっている。
このうち「ハット・ソアン」は2011年に緊急保護一覧表に登録されたが、2017年に同リストから削除され、人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)に移行・登録された。