フイン・スアン・クアンさん(63歳)は、南中部高原地方ダクノン省ダクミル郡トゥアンアン村(xa Thuan An, huyen Dak Mil)放送局の放送員だ。45年、地域放送の仕事に携わっている。
(C) dantri |
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起床は朝4時30分、2004年に放送員になってから1日たりとも、習慣は変わっていない。毎日、中央や省の放送局の番組をリレーしつつ、地域のニュースを編集する。村の人々が生活や生産に必要な情報を知ることができるようにすることが、彼の仕事だ。
もとは1977年から、ダクミル郡文化情報室の放送局で技術員として働いていた。人々が住む場所まで「線」を引っ張るのが、仕事だった。国が統一してすぐは、ダクノン省に住む人はまばらで、森に住む人も多かったため、目的地まで数日歩くようなこともざら。
「当時は設備も今のようにたくさんはなく、ひとつの村に、北部の放送局から運ばれてきたスピーカーが何台かしかありませんでしたが、故障ばかりで、毎日のように職員が修理に出かけていました。20km近く歩いてやっと着いた先で、電柱によじ登ってスピーカーを外し、また取り付けるといった作業をしたこともありました」とクアンさんは思い出す。
1989年、クアンさんは健康を理由に技術員を退職したが、2004年3月にトゥアンアン村が放送員を募集していることを知り、手を挙げた。「もともと技術屋だったのがアナウンサーになったんだから、最初は戸惑いました。でも少しずつ自信もついてきました」とクアンさん。放送局のスムーズな活動のためにクアンさんは、放送がよく聞こえない地域に情報を伝えるために、ラジオ受信機を12台購入して欲しいと、村に要請した。
いま村の放送局には、50WのFM送信機1台、15mのアンテナ、ラジオ受信機27台、25Wの大型スピーカー54台などが備わる。
クアンさんは、放送員をする傍ら、放送設備の検査や修理などの仕事も引き受けている。「ひとり放送局だもんで忙しいですよ。特殊な仕事だから、朝早くに出かけて、帰りは遅く、休日もない。でも自分で選んだ仕事だから、頑張らないとね」とクアンさんは話した。