情報通信省傘下で携帯通信大手のモビフォン(MobiFone)が、デジタルテレビ放送サービスを提供する地場オーディオ・ビジュアル・グローバル(Audio Visual Global=AVG)株95%を購入し多額の公的資産損失をもたらした汚職事件で、被告14人の裁判がハノイ市で開かれている。
(C) vnexpress |
同事件は、AVGが企業価値評価で大幅に水増しされ、モビフォンが同社株95%を実質的な価値を大きく上回る価格で購入したというもの。
同市人民検察院は20日、主犯格であり、公的資金管理・使用に関する規定に違反し甚大な損害をもたらした罪と収賄罪に問われている元情報通信相(2011年~2016年任期)のグエン・バック・ソン被告(男・66歳)に死刑を求刑した。
ソン被告は、地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)のファム・ニャット・ブオン会長の実弟であるAVG元会長のファム・ニャット・ブー被告(47歳)から300万USD(約3億3000万円)の賄賂を受け取ったとされ、検察側は「反省がない」と指摘している。
同じ罪に問われている前情報通信相(2016年~2018年任期)のチュオン・ミン・トゥアン被告(男・59歳)は14~16年の禁固刑を求刑された。同被告は、ソン被告の後任として情報通信相に就任した直後にブー被告から20万USD(約2200万円)の入ったプレゼントが届き、「就任祝いと思い込んでいた」と供述しており、検察側は「トゥアン被告は情報通信次官を務めていた際に書類への署名を強いられた」、「反省を示し捜査に積極的に協力した」との見解を示した。
モビフォン元会長 兼 社長のレ・ナム・チャー被告、元社長のカオ・ズイ・ハイ被告も同じ罪に問われており、それぞれ23~25年、14~16年の禁固刑を求刑された。2人はブー被告からそれぞれ250万USD(約2億7300万円)、50万USD(約5500万円)の賄賂を受け取り、その中からソン被告に賄賂として70万USD(約7600万円)、20万USD(約2200万円)をそれぞれ手渡した。
ソン被告は何度も供述を変えた末に300万USDを受け取ったことを認めたものの、使い道については「覚えていない」としている。トゥアン被告、チャー被告、ハイ被告の3人については、いずれも反省を示し、家族が全額を捜査機関に納付している。
公的資金管理・使用に関する規定に違反して甚大な損害をもたらした罪に問われている同省の幹部、モビフォンの役員、信頼性の非常に低いAVGの企業価値評価をモビフォンに提供したAMAX評価投資コンサルティング(AMAX)の元社長・社員の計9人は2~2年6か月から5~6年の禁固刑をそれぞれ求刑された。
贈賄罪に問われていたAVG元会長のブー被告は刑事法第364条第4項に触れ、量刑は禁固12~20年と規定されていたが、量刑を大きく下回る3~4年の禁固刑を求刑された。
同被告について検察側は、「捜査に積極的に協力し、被害克服に真摯に取り組み、仏教協会などの社会奉仕活動に大きく貢献したとして、特別優遇措置を適用する必要がある」と主張した。