ホーチミン市5区キムビエン市場に面した一等地に立地する民家の購買をめぐり1995年に発生した「詐欺事件」で、同市人民検察院は4月19日、当時容疑者として捜査を受けていたチュー・クアン・フンさん(男性・72歳)に対して約24年ぶりに地元で公開謝罪した。
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この謝罪の中で損害賠償については触れられなかったため、フンさんは謝罪を受け入れず、精神的および物質的な損害賠償として合わせて990億VND(約4億8000万円)の支払いを求めた。
フンさんは25年前、この家を担保に銀行からビジネス用の資金2億VND(当時)を借り入れたが、デフォルト(債務不履行)となったため、担保資産を差し押さえられた。妻も参加していたトンティン(信頼できる人たちとグループを作って積立のようにお金を出し合い、定期的に1人ずつ順番にその合計額を受け取るという小口金銭相互扶助システム)から金銭を回収することができず、借金を返済できなかったため、1994年4月に「信頼を悪用し資産を横領した容疑」で逮捕された。
その時、Nさんは自分の母方の叔父で同市人民裁判所の裁判官を務めていたLさんを連れ、「叔父がフンさんの妻を助ける」と約束してフンさんの家を買い取った。フンさんは2人の条件を飲み、表通りに面する幅20m以上、時価総額500テール(1テール=37.8g)にも達していたこの家を140テール(約5292g)で売却することに同意した。
Nさんから手付金として受け取った2億2800万VND(当時)は銀行への借金の返済に充て、この家の所有証明書はNさんが保管していた。しかしNさんは、フンさんの妻が逮捕されたことで名義変更が難航したことを理由に、期限までにフンさんに購入代金を支払わず、所有証明書もそのまま保管してフンさんに返還しなかった。
フンさんはNさんを提訴したが、Nさんは出廷しなかったため、裁判は数回にもわたって延期された。さらに理不尽なことに、被害者だったフンさんはその後Nさんに提訴され、1995年11月に「詐欺・資産横領容疑」で逮捕された。3回にわたって裁判を受けたフンさんは1996年12月に釈放されたが、居住地から出ることを禁止され、続く1998年にようやく捜査停止決定を受けて冤罪が晴れた。
同事件に関連して、同市当局は幹部7人を警告・けん責処分とした。Lさんについては、フンさんの家の購買に介入して冤罪を引き起こしたことが判明したため、裁判官の役職から外した。同市人民検察院は1999年9月に内部でフンさんに謝罪したが、損害賠償については「上の許可を待っている」として現在まで一切支払っていない。
フンさんの妻も1999年10月に釈放され、捜査停止決定を受けて冤罪が晴れた。傷病兵で足の不自由なフンさんと妻は、この家の所有権を取り戻すことができたものの、2人が逮捕された時に6~12歳だった子供4人はストリートチルドレンとなり路頭に迷い、うち2人は悪友に誘われて麻薬を使用し麻薬中毒で死亡してしまった。
フンさんは一家の人生を狂わせた同市人民検察院に対して、990億VND(約4億8000万円)の損害賠償を求め続けている。