ベトナムでビールと言えば、大衆飲み屋のビールメーカーの瓶や缶ビール、ハノイ市の旧市街地やホーチミン市1区ブイビエン通りなどのバックパッカーエリアで小さなプラスチック製のイスとテーブルで飲むアルコール度数3%程度のビアホイ(生ビール)が知られている。しかし、2年前からベトナムでもクラフトビールの製造が盛んになり、現在では各地でクラフトビール工場を併設したビアホールが国内外の客を誘致している。米国のニュース専門放送局CNNが報じた。
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商工省によると、ベトナムにおける2016年のビール消費量は38億Lでアジア第3位、製造元別シェアはタイガービールやサイゴンビール・アルコール飲料総公社[SAB](サベコ=SABECO)、生ビールが大半を占めるという。
一方で、ホーチミン市ではプラチナム(Platinum)、パスツールストリートブリューイング・カンパニー(Pasteur Street Brewing Company)、ウィンキング・シール(Winking Seal)、ハート・オブ・ダークネス(Heart of Darkness)、ファジー・ロジック(Fuzzy Logic)などのクラフトビールがメジャーになってきている。
パスツールストリートブリューイング・カンパニーは2015年に2人の米国人が創業した。同社ではホップを米国から、麦芽を欧州から仕入れているが、ダラットコーヒーやパッションフルーツ、ドリアンなどベトナムの原料を加えることで70種類のビールを取り揃えている。
その創作力から、2016年にはアジア地域におけるビールコンテスト「アジアン・ビール・メダル」の3部門で金賞を受賞した。同社のビールは2017年末にマレーシア、オーストラリア、香港、米国、欧州、日本への輸出が開始される予定だ。
クラフトビール界では、外国人オーナーだけでなくベトナム人も奮闘している。ベルギーに本社を置き、世界各国に製造拠点を持つ酒類メーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ (Anheuser-Busch InBev N.V.)で勤務経験のあるチュオン・ロックさんは、ホーチミン市1区にイースト・ウエスト・ブリューイング(East West Brewing)を立ち上げた。
客に1杯のビールに10万VND(約505円)を払わせることは大きなチャレンジだったが、ビアホールに工場を併設し製造工程を見学してもらうことで客の支持を得ることに成功した。ロックさんは当初、顧客層には外国人観光客やホーチミン市在住の外国人を想定していた。ところが、2016年年初6か月における顧客の85%がベトナム人だったといい、経済発展に伴うベトナム人の中流層の増加に驚きを見せるほどだ。