- 日越協力をさらにアップグレード
- 二国間関係や地域・国際情勢など議論
- 日ASEAN、日メコン協力などでも意見交換
ベトナムを訪問している石破茂内閣総理大臣とファム・ミン・チン首相は現地時間28日午前8時55分から約110分にわたり、首相府で会談を行った。
![]() (C) 外務省 |
会談に先立ち、石破首相による英雄烈士記念碑及びホー・チ・ミン廟での献花と、チン首相主催の歓迎式典が行われた。会談後、両首脳は、文書交換式及び共同記者発表を行い、共同プレスリリースを発出した。
チン首相は会談の冒頭、石破首相のベトナム訪問を歓迎し、日越関係が様々な分野で発展してきていることを嬉しく思うと述べ、「包括的戦略的パートナーシップ」の下、石破首相と共に二国間関係のさらなる発展や地域・国際情勢への対応について緊密に連携していきたいと述べた。さらにチン首相は、2025年大阪・関西万博が成功裡に開催されていることに祝意を表した。
石破首相はこれに対し、今回の訪問での温かいもてなしに謝意を述べるとともに、日本とベトナムは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序や多角的自由貿易体制を維持・強化することにコミットしており、日本は「新しい時代」を迎えるベトナムにとってのかけがえのないパートナーであり続けると述べた。続けて、ベトナムとの関係強化は、日越両国ひいては地域の安定と繁栄に資するものであり、日越協力をさらにアップグレードしていきたいとした。
<二国間関係>
安全保障について両首脳は、ベトナム軍への資材運搬車の移転完了や護衛艦「すずなみ」の南中部沿岸地方ダナン市への寄港といった協力の進展を歓迎しつつ、戦略的意思疎通の強化のため、外務・防衛次官級協議(次官級2+2)を創設することで一致した。また、防衛装備・技術協力やOSAといった具体的協力の重要性について議論した。
経済について、石破首相はトー・ラム書記長が掲げる「新しい時代」の方向性を歓迎すると述べ、両首脳はベトナムの経済成長は地域全体の発展のためにも重要だとの認識を共有した。
両首脳は、米国の関税措置やそれに対抗する中国の報復措置が世界経済や多角的貿易体制に与える影響を踏まえつつ、経済分野について幅広く議論した。石破首相は、現下の状況によって影響を受ける日本企業の声に耳を傾け、ベトナムとも緊密に意思疎通していくことを重視していると述べた。また、世界経済が不透明性を増す中で、外的ショックに対するベトナムの強靱性を高めるため産業高度化を進めることの重要性で一致した。
石破首相は、半導体分野の人材育成のため、ベトナムが博士後期課程学生の育成目標としている500人について、その約半数程度を日本で受け入れる方針を表明するとともに、日越協力の象徴プロジェクトである日越大学において半導体プログラムを開始すると述べた。
グリーントランスフォーメーション(GX)・エネルギー分野について、石破首相は、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)などを中心とした日越協力プロジェクトとして、洋上風力、連系線整備、バイオマス、国際協力銀行(JBIC)による支援など、総事業規模約200億USD(約2兆8800億円)のプロジェクトを協力して推進していくとした。両首脳は、日越がアジアのエネルギートランジッションを主導していくことで一致した。
ベトナムの投資・経済協力の環境整備について、石破首相は、チン首相のリーダーシップへの期待を表明し、両首脳は液化天然ガス(LNG)事業者をはじめ、日本企業が抱える諸課題への解決に向けて連携を強化することで一致した。また、日本として、JBICの融資や経済産業省事業などを通じた日本企業のベトナムへの投資や事業拡大の支援を引き続き進めるほか、経済協力開発機構(OECD)との更なる関係強化を後押ししていくと述べた。
防災・農業分野について、石破首相は、北部山岳地域における防災インフラ整備や食料安全保障に関する支援を通じ、ベトナムの強靭性強化や格差是正に貢献していくと表明した。チン首相はこれに対して謝意を述べた。
人的往来について両首脳は、首脳往来や政党間、議会間、草の根レベルの交流の重要性を確認した。また、在日ベトナム人が60万人を突破したことも念頭に、2025年大阪・関西万博やGREEN×EXPO2027の機会も活用して、日越間の人的交流を活性化することを確認した。
<地域・国際情勢への対応>
石破首相は、ベトナムは法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、要となるパートナーであると表明した。両首脳は、諸課題への対応について幅広く意見交換を行い、今後も緊密に連携していくことで一致した。
東・南シナ海情勢について両首脳は意見交換し、引き続き緊密に連携していくことを確認した。
また、北朝鮮情勢については核・ミサイル問題を含めて意見交換し、拉致問題の即時解決の重要性について確認した。
このほか、ウクライナ情勢、ミャンマー情勢をはじめとする諸課題への対応や、日ASEAN、日メコン協力、国連における協力などについても意見交換した。