金融市場:商業銀行セクター
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1990年代までは、金庫・たんす預金と現金決済が中心であったベトナムが、2000年代に入ってから商業銀行の近代化により、企業間取引が商業銀行経由に移行し、2000年代半ば以降の与信取引の高成長により、民間企業セクターの高成長を支えた点は大いに評価される。
ベトナムの商業銀行の預金・融資の規模は2000年代半ばから急速な成長をみせた。貸付成長率の推移を示したチャートのとおり、2001年から2024年までの年平均貸付成長率は21%に達し、ベトナムの経済成長に大いに貢献している。2024年には中央銀行が実施した柔軟な金融政策運営と、その他のマクロ経済政策との組み合わせにより、マクロ経済や外為市場は概ね安定した。
金(ゴールド)市場については、国が金地金大手サイゴンジュエリー(Saigon Jewelry=SJC)のゴールドを国家的なゴールドブランドとしている。このため、純金99.99%で品質が同じであっても、他のブランドのゴールドはSJCブランドのゴールドよりも低い価格で取引されている。また、ゴールドの輸出入が厳しく規制されていることから、国内外のゴールド市場が連動せず、国内価格が国外価格を大きく上回る乖離が生じている。この状況により、ゴールドの密輸が横行しているのが現状である。
度重なる戦争と戦後の平価切下げを経験したベトナム人は、リスク回避策としてゴールドを資産として貯める習慣がある。2024年1月現在、約400tのゴールドが、たんす預金として眠っていると推測される。