トゥオイチェー(Tuoi Tre)新聞は、チリで操業中の台湾漁船から脱出して、5月26日に帰国したベトナム人船員の一人Aさんにインタビューを行った。これによると、2005年10月21日にベトナムの労働派遣業者の紹介で台湾のイカ釣り漁船に乗り込んで以来、Aさんは連日18時間以上にも及ぶ労働を強いられたばかりか台湾人上司から日常的に暴力を振るわれていたという。肉体的精神的苦痛に耐えかねたAさんは今年5月15日、チリの沿岸から4km地点で漁船が操業している際に海に飛び込んで脱出を図った。水温10度以下の海面を10時間近漂流し、体力が限界に近づいた時Aさんは運よくチリ税関の船に救助されたという。
帰国したAさんは過酷な労働条件の説明を一切行わなかった労働派遣業者に怒りをあらわにしている。この業者はさらにAさんに対し、今回の事件について口外しないよう誓約書を書かせて20万ドン(約1600円)を渡したきり、何の補償を行う姿勢も見せていない。また、Aさんはこの業者に派遣手続き費用として1800万ドン(約15万円)を支払い、さらに7ヶ月間過酷な労働に耐えたにもかかわらず、家族が受け取ったこの間のAさんの給料はたった160ドル(約1万8千円)に過ぎないという。