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それでもトゥアンさんは、物資を受け取るために長い列を作って待っていた人々や、子供たちが戦争に行ってしまい、気にかけてくれる人がいなくなり、物資を受け取って泣き出した人々のことを思い出し、自分たちのやっていることには意義があるのだと改めて感じたという。
トゥアンさんは、慈善活動に出かけるたび、荒廃した風景を見ては悲しくなり、ますます戦争の激しさを感じた。
ハリコフの現在の状況について、トゥアンさんはこう話す。「今はとりあえず落ち着いています。爆発音は遠くから聞こえるだけで、以前のように地下のシェルターに避難することはなくなりました。私の家族は、戦争の前と同じとまではいきませんが、困窮するほどではありません。食糧もあり、往来もできています。子供は学校に行くことはできませんが、オンラインで授業を受けられますし、インターネットも使えるので、最新の情報も入手できます。それでも、戦争はまだ続いていて、常に危険は潜んでいます。いつ都市がまた攻撃を受けるかもわからないので、一瞬たりとも安心できるときはありません」。
トゥアンさんによると、地元当局は電気や水道に問題が発生すれば迅速かつ献身的に対応してくれるため、大いに助かっているという。
今の一番の願いは何かと聞かれたトゥアンさんは、即座に「平和です!」と答えた。トゥアンさんは素早く「平和」という単語を発したが、戦地に留まり、死傷者を目の当たりにしてきた彼は、平和という言葉を口にして、息を詰まらせ、目には涙を浮かべていた。
「戦争でたくさんのものが失われましたが、一番大きいのは、多くの家族がばらばらになったことです。私の知人も、何人もいなくなりました。前日に電話で話をしたのに、次の日には電話に出られなくなった人もいます。戦地に赴いてたったの2週間で犠牲になった兵士だっています。それに、たくさんの若いロシア人兵士もここで命を落としているんです。こんな状況の中でも、私の家族は全員が揃っていることを、幸運に感じています」とトゥアンさんは語った。