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最初、ニさんは病人の世話をすることについて、家で自分の父母の世話をするのと同じような感じだと考えていた。しかし、実際は違った。病人の世話に関する基本事項の手ほどきを教わり全てを覚えるのに、彼女は丸1日を費やした。
「この仕事は当然ながら技術が必要です。体を拭く、入浴をさせる、歯を磨く、寝返りを打たせる、車椅子に乗り降りするときに体を支える。全てにおいて正しい方法でやらなければなりません。誤った方法でやってしまえば、患者さんの健康に影響を与えてしまいます」。
「これらはあくまでも基本的なことで、加えて日光浴の時間や、肺に影響を与えないように背中をさする方法など、ケースに応じて医師や看護師が注意事項を指導してくれます。必死にやって、ようやく仕事に慣れました」とニさんは教えてくれた。こうして彼女は、病人の世話をするという仕事を得て、ホーチミン市で暮らすようになったのだった。
トンニャット病院で最初の患者の世話をした後、ニさんは国際神経外科病院が人を必要としているという話を聞いて、試しに移ってみることにした。それから気づけば3年が経った。はじめはニさん1人しかいなかったが、その後ハーさんが加わった。2人とも地方出身という同じ境遇だったため、寂しさを紛らわすことができた。
「自分の父母や祖父母の面倒をみるのは簡単ですが、いきなり他人のお世話をして汚物や血を見るのは大変ですよ!私もはじめは怯みましたが、すぐにこの仕事に慣れました。家事手伝いの仕事で呼ばれても行きませんが、病人の看病なら行きます。その方が健全な気がするんです。ただし、病人を見守っていないといけないので、睡眠だけは不規則ですが」とニさん。
仕事は健全で、しかも収入もかなり良い。病人の世話役を雇う家庭は一般的に経済状況は良いが時間がないというケースが多いため、世話役への支出いは大した問題ではないという。ニさんによると、田舎で一生懸命働いても1日10万VND(約460円)程度しか稼ぐことができないが、この仕事を始めて最初の患者を世話した時には1か月で800万VND(約3万7000円)の収入になったという。彼女の慎重な仕事ぶりも評価され、患者の家族は50万VND(約2300円)の賞与もつけてくれた。これは、彼女のような貧しい労働者にとっては夢のような金額だった。