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[特集]

「他人の看病」で高収入、故郷を離れ病院で生活する女性たち

2019/06/30 05:59 JST更新

(C) thanhnien
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 近年、人々の生活は日増しにせわしなくなり、多くの人は親しい人が病気になっても世話をする時間が取れない。そのため、病人の看病をするという新たな仕事が生まれた。ベトナムの大きな病院では、常時数十人から数百人がそのような仕事をしている。

 メコンデルタ地方ベンチェ省出身のチュオン・チャウ・ハーさん(女性・43歳)は、ホーチミン市タンフー区にある国際神経外科病院でこの仕事をしている。午前8時、彼女は病室の前の折りたたみ椅子の上で、ジャケットを上にかけて横になっていた。

 「昨夜、私の患者さんは深夜3時まで大騒ぎしていたんです。副鼻腔炎の症状もあり、薬を飲んでもまだ頭痛が取れません」とハーさんは疲れた声で言った。

 ハーさんの隣に置いた折りたたみ椅子で、同業であるメコンデルタ地方カマウ省出身のボー・ティ・ニさん(女性・48歳)が教えてくれた。「ハーさんは難しい患者さんにあたりましたよ。患者の男性は80歳を過ぎていますが、まだ力が強く、騒ぎ出すとチューブもオムツもむしり取ってしまいます。医者は彼の手足をベッドに縛るのですが、それでも暴れてベッドが濡れてしまうので、常に見守っていないといけないんです。どんな仕事もそうですが、良い時もあれば、大変な時もあります」。

 ニさんとハーさんの2人は、この病院で当直のようにずっと病人の世話をしている。ホーチミン市内の病院では、基本的にこの仕事の内容や収入はさほど変わらない。

 「私はカマウ省出身で子供が2人います。10年前に夫が亡くなってから、あらゆる仕事をして苦労してきました。農業、養豚、酒造から雇われ労働者、漁船の船員まで何でもやりましたが、子供を育てるには十分な稼ぎがありませんでした。そんな時、ここで同じようにして働く親戚の子から、病人の世話で十分な稼ぎが得られるという話を聞き、私もやってみることにしたんです」と、ニさんはこの仕事を始めたきっかけについて教えてくれた。

 親戚が紹介してくれたニさんの初めての患者は、ホーチミン市タンビン区トンニャット病院に入院していた90歳近い男性だった。家族は男性の面倒を見る時間がないため、ニさんが24時間体制で世話をするという任務を負った。

 最初、ニさんは病人の世話をすることについて、家で自分の父母の世話をするのと同じような感じだと考えていた。しかし、実際は違った。病人の世話に関する基本事項の手ほどきを教わり全てを覚えるのに、彼女は丸1日を費やした。

 「この仕事は当然ながら技術が必要です。体を拭く、入浴をさせる、歯を磨く、寝返りを打たせる、車椅子に乗り降りするときに体を支える。全てにおいて正しい方法でやらなければなりません。誤った方法でやってしまえば、患者さんの健康に影響を与えてしまいます」。

 「これらはあくまでも基本的なことで、加えて日光浴の時間や、肺に影響を与えないように背中をさする方法など、ケースに応じて医師や看護師が注意事項を指導してくれます。必死にやって、ようやく仕事に慣れました」とニさんは教えてくれた。こうして彼女は、病人の世話をするという仕事を得て、ホーチミン市で暮らすようになったのだった。

 トンニャット病院で最初の患者の世話をした後、ニさんは国際神経外科病院が人を必要としているという話を聞いて、試しに移ってみることにした。それから気づけば3年が経った。はじめはニさん1人しかいなかったが、その後ハーさんが加わった。2人とも地方出身という同じ境遇だったため、寂しさを紛らわすことができた。

 「自分の父母や祖父母の面倒をみるのは簡単ですが、いきなり他人のお世話をして汚物や血を見るのは大変ですよ!私もはじめは怯みましたが、すぐにこの仕事に慣れました。家事手伝いの仕事で呼ばれても行きませんが、病人の看病なら行きます。その方が健全な気がするんです。ただし、病人を見守っていないといけないので、睡眠だけは不規則ですが」とニさん。

 仕事は健全で、しかも収入もかなり良い。病人の世話役を雇う家庭は一般的に経済状況は良いが時間がないというケースが多いため、世話役への支出いは大した問題ではないという。ニさんによると、田舎で一生懸命働いても1日10万VND(約460円)程度しか稼ぐことができないが、この仕事を始めて最初の患者を世話した時には1か月で800万VND(約3万7000円)の収入になったという。彼女の慎重な仕事ぶりも評価され、患者の家族は50万VND(約2300円)の賞与もつけてくれた。これは、彼女のような貧しい労働者にとっては夢のような金額だった。

 「これは長期の場合の金額で、1週間や半月といった短期の場合は1日30万VND(約1380円)、今は35万VND(約1600円)に上がりました。他の病院に勤める同業者には1日40万VND(約1800円)もらっている人もいますが、エアコンなし、不衛生など厳しい条件下で働いています。この仕事は病院が家みたいなもの。ホーチミン市に出てきてから3年間、家を借りていません。ハーさんも同じですよ」とニさんは教えてくれた。

 ハーさんは「この仕事は、病院の食堂でごはんを食べ、廊下で寝て、トイレでシャワーを浴び、洗濯物を外に持っていく、そんな生活です。病院の外に出られないのに、部屋を借りることなどありません。患者を受け持ったらずっと世話をしなければいけないため、本当にどうしようもない時だけ同業の知り合いに数時間仕事を頼むくらいで、故郷に帰ることなど滅多にできません」と語った。

 現在、ハーさんが世話をしている患者は1人だけだが、多い時には同時に3~4人の患者を抱える。1日35万VND(約1600円)の賃金で、1か月の平均収入は1000万VND(約4万6000円)を超える。飲食などの費用を差し引いても、月に700万~800万VND(約3万2000~3万6700円)を手元に残すことができ、2人の子供のため、また自身の老後の資金に充てることができる。

 同病院の看護師であるチャン・ホン・ティー・ティーさんは、「病院の医師は、患者の世話をする人たちが正しく、また最も良い方法で看病できるよう、具体的なケースに応じて必要になる医療の知識や技術を指導しています。この病院で看病を仕事にしている女性たちはとても機敏で熱心、そして献身的です!彼女たちのおかげで、私たち看護師も安心して看護にあたることができます」と語った。 

[Thanh Nien 09:31 24/05/2019, A]
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