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ヒエウくんが入院している間、ニーさん夫妻は家中の売れそうなものを売り払い、あちこち走り回ってお金を借りた。現在まで、息子の命を救うためにどれだけの費用がかかったのかはっきり思い出すことはできないが、年老いた夫婦は今でも毎月数百万VND(100万VND=約4700円)の利払いを続けている。
1年近く生死をさまよい、家族に付き添われながら幾度もの手術を乗り越え、ついにヒエウくんは危険な状態を脱して退院することができた。しかしながら、彼の両手は永遠に失われ、両足も思うように動かすことができなくなってしまった。ヒエウくんはそれでも学校に連れて行って欲しいと父親に懇願した。
愛する息子を思って眠れない夜が続く中、ニーさんはヒエウくんのために特別なペンを作ることを考えついた。その日の朝、ニーさんはいつもより早く起き、ヒエウくんの手に合うプラスチック製のパイプを買った。そしてパイプに2つの穴を開けてペンを固定し、ヒエウくんの短くなった腕とパイプをくくり、文字が書けるようにした。はじめのうちは、ヒエウくんにとってプラスチックのパイプを操るのはとても大変だったが、次第に習得し、今ではその「魔法のペン」を使って絵が描けるほどになった。
短い腕で夢を描く
「書く練習を始めた時、自分が思っている通りにパイプを操作するのがとても大変でしたが、それでも数か月後には上手に操れるようになりました。今ではクラスの友達と同じスピードで書き取りができるし、このペンを使って絵も描けるようになりました」とヒエウくんは興奮気味に教えてくれた。