(C) Lao Dong, ファンディンホ公園に集う若者たち 写真の拡大 |
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タンビン区で「おしん」をして10年になる北中部クアンチ省出身の女性、グエン・ティ・リエンさん(30歳)は、隣に座っている恋人を紹介してくれた。「彼は腕のいい左官職人で、収入も安定してる。何より、誠実な人なんです」とはにかんだ。
同郷同士のハオさんとリエンさんは、2年前に交際を始めてからずっと、ファムディンホ公園でデートしている。「おしん」をしていると、土曜の夜だけが息をつける時間。週1回の短い逢瀬だ。二人は結婚を約束しているが、収入が十分ではないため、今はとにかく一生懸命働くことだけを考えている。ハオさんは「仕事や生活で苦労ばかり。でもその分、週末にこの公園で彼女と会えるのが大きな楽しみ。ここに来れば新しい友達できるしね」と幸せそうだ。
メコンデルタ地方ロンアン省出身のハ・ティ・ルオンさん(26歳)は、80歳の老人の世話をする心の優しい女性だ。彼女は、友達からファムディンホ公園について教えてもらい、恋人を探しに来たのだという。「恥ずかしいので、ただ遊びに行くとだけ伝えて出てきました」と言うルオンさん。「おしん」を好きになってくれる人なんていないと思っていたが、この公園に来て、同じ境遇の人たちとたくさん会えてとても楽しかったので、来週もまた来るという。
この公園について心理学者のリー・ティ・マイ氏は、「現代社会における一筋の光」と表現する。ホーチミン市内の多くの公園は、夜になると売春や麻薬が横行する危険な場所と化すが、この公園では実に健全で愛情あふれる世界が広がっている。マイ氏は、「市内には工場のワーカーや学生たちが集まる場所はあるけれど、おしんやバイクタクシー、建設現場などで働く人々の交流については目を向けられていないのが現状だ」と語った。
貧しさ故に故郷を遠く離れて都会で働き、何かと苦労の多い彼らには、自分の境遇を打ち明け、共感してもらえる場所が必要だ。この公園は、現代社会が忘れかけている人情の溢れる貴重な憩いの場といえるだろう。