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ハノイ市タインスアン区のランドン集合住宅地区に住むグエン・バン・ミンさん(70歳)はこの10年、毎日夕方になるとグエンチャイ通り沿いの壁や電柱などに張られた張り紙をはがして歩いている。この時間は買い物や子供の迎えで急いでいる人が多く、誰もミンさんに注意を向けない。気が付いている人の目も、たった1人で何ができるという冷ややかさが感じられる。
ミンさんは自分が人から変人と思われていることを知っている。張り紙はがしをするのは、「かつてのハノイはきれいだった。1軒の店には1つの看板だけで、今のように広告でごちゃごちゃしていなかった」という思いからだ。
グエンチャイ通りは交通量と建設現場が多く、粉塵と埃の多い通りとして知られている。1日中もやがかかっているように見えるほどだ。それでも毎日、運動のつもりでクアットズイティエン通りとの交差点からソー交差点まで往復5キロを歩いている。「粉塵が舞っていても、高齢者は外に出て太陽を浴びたほうがいい。往復すれば道路の両側で張り紙をはがせるし」と語る。