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- 退職後の生活すら十分ではない年金額
- 社会保険料を長く納めるほど損することに
- 制度整備の時は労働者の権利を考慮すべき
ホーチミン市ビンチャイン郡に住む男性フアンさん(1963年生まれ)は、2023年12月末に年金の支給月額決定書を受け取り、大きなショックを受けた。
42年2か月にわたって社会保険料を納め、自分の計算では少なくとも450万VND(約2万6900円)はあるだろうと思っていたが、実際は336万5129VND(約2万円)でしかなかったからだ。
1981年9月から南部メコンデルタ地方バクリエウ省で教職につき、小学校や中学校の副校長、校長などを歴任した彼は、2008年1月31日に年金受給待機退職決定書を受け取った。
当時の規定では、男性労働者の年金受給資格は満60歳に達しており、かつ満20年の社会保険料の納付期間があることだった。
フアンさんは26年6か月の社会保険料の納付期間があったものの、まだ45歳で年齢要件を満たさず、また、年金支給額の算出上限にも達していなかったため、定年年齢に達するまでは年金支給額を増やすために、サイゴン交通運輸機械総公社(SAMCO=サムコ)の自動車サービス工場の警備員として働いた。同社で働く間、2008年5月から2015年12月までは国の給与制度に従って社会保険料が納付され、2016年1月から2023年12月までは会社の給与制度に従って社会保険料が納付された。
社会保険料の納付期間が、国の給与制度に従っていた期間と、会社の給与制度に従っていた期間があったため、社会保険機関はこれらの期間の平均値をベースに年金額を計算。社会保険料の納付基礎となる平均月給が448万6838VND(約2万6900円)となったため、その75%の336万5129VND(約2万円)が月額年金となり、加えて7.5年の余剰納付期間分として1682万5643VND(約10万円)の一時金支給となった。
しかしフアンさんは、この金額では自分が生活していくことすら十分ではないと話す。90歳近くになる両親も養わなければならない。「社会保険制度を信頼し、納付額、納付期間に応じた年金額の計算がなされると思っていました。ですが、長く納めるほど損をすることになりました」と彼は言う。
フアンさんの計算では、2008年の退職時点で社会保険料を納めるのをやめていれば、退職前5年間の平均給与に基づいて年金額が計算されたため、今回決まったものより高い年金額になったはずだという。また、定年年齢に達するまで社会保険料を納めたがために、失業保険を受給することもできなくなった。
「制度は実情に合わせて変更されて然るべきだとは思うが、個人的にはこの変更によって大きな損を被ることになったため、制度を整備する時には労働者の権利を念頭にしっかりと考慮し、社会保険料を長く納付した方がメリットがある仕組みにしなければならない」とフアンさんは指摘している。