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ホーチミン市警察は同市資源環境局宛てに公文書を送付し、捜査の目的で華人系不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)に関連する不動産156件の実体について報告するよう要請した。
市警察は不動産の実体確認を確実かつ迅速に行うため、資源環境局に人員を派遣し、共同で作業を進めている。
対象となる不動産には、1区グエンフエ(Nguyen Hue)通りの歩行者天国の超一等地に立地するショッピングセンター「ユニオン・スクエア(Union Square)」(旧称:ビンコムセンターA)や、6つ星ホテル「ザ・レベリー(The Reverie)」を併設した複合施設「サイゴン・タイムズスクエア(Saigon Times Square)」、1区トンドゥックタン(Ton Duc Thang)通り34番地に立地する高層ビル「IFCワン・サイゴン」(旧称:サイゴン・ワン・タワー=Saigon One Tower)のほか、3区、5区、7区、トゥードゥック市、ビンチャイン郡の不動産などが含まれる。
これに関連し、公安省傘下の密輸経済汚職犯罪捜査警察局(C03)は今月上旬、社債の発行・取引で詐欺行為を働いたとして、VTPのチュオン・ミー・ラン会長(女・66歳)を含む4人を詐欺・資産横領容疑で逮捕した。
同事件ではVTPの系列企業であるアンドン投資グループ(An Dong Investment Group)が複数回にわたり違法な社債発行を実施したという。社債発行総額は明らかにされていないが、報道によると、同社は2018年9月から2019年1月にかけて25兆VND(約1520億円)の社債を発行。このうち、15兆VND(約910億円)を2023年9月に、10兆VND(約610億円)を2024年1月にそれぞれ償還する。
VTPをめぐる疑惑はこれだけではない。2013年から2014年にかけて開かれたビナラインズ[MVN](Vinalines)の元会長で元交通運輸省航海局長のズオン・チー・ズン被告らによる汚職事件の裁判では、同被告がサイゴン港(ホーチミン市4区サイゴン港ニャーゾン・カインホイ埠頭)の機能移転に伴い展開される不動産開発案件の獲得を希望していたVTPのラン容疑者から受け取った100万USD(約1億5000万円)をファム・クイ・ゴ公安次官(当時)に渡したと証言。疑惑の渦中にあったゴ公安次官は、2014年2月に60歳で「肝臓がん」により死去している。なお、ズン被告は死刑判決を受けた。
ラン容疑者は中国系ベトナム人で、香港出身で英国籍の実業家であるエリック・チュー・ナップ・キー(Eric Chu Nap Kee)氏と婚姻関係にある。1991年にVTPを設立し、当局と太いパイプを持っていることから、ホーチミン市内の数多くの一等地を取得してきた。ラン容疑者を含む一族の計10人は2014年にベトナム国籍の放棄を一斉に申請したが、2015年になって申請を取り下げている。
C03がVTP事件の起訴を公表する直前、タンベト証券(TVSI)の会長 兼 社長で、VTPと深いコネクションがあるとされるサイゴン商業銀行(SCB)の取締役を務めるグエン・ティエン・タイン氏が49歳の若さで「脳卒中」で急死。同氏はVTPの副社長を務めるトン・ティ・タイン・ホアン女史の夫でもある。TVSIとSCBは複数の企業の社債発行で協力し、TVSIが発行コンサルタント、SCBがアンダーライター(引受主幹事)の役割をそれぞれ果たしていた。
なお、VTPとコネクションがあるとされるビバランド開発投資(Viva Land Management & Development)は2021年末から2022年にかけて、「IFCワン・サイゴン」、ハノイ市中心部の大型オフィスビル案件「キャピタル・プレイス(Capital Place)」、東北部地方クアンニン省トゥアンチャウ島(dao Tuan Chau)にある複合型リゾート施設案件を次々と買い取っている。このことからVTPが先手を打って「金蝉脱殻」により逃げ出そうとしていたのではないかと疑問視する声が上がっている。
VTP事件をめぐり、公安省は資産の回収に向けて捜査範囲を拡大している。