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東北部地方タイグエン省ドンヒー郡(huyen Dong Hy)に住む小学3年生のH君は、生まれつき両手がなく、身長は1mもない。
母親のフオンさんによると、妊婦健診では特に異常は指摘されず、順調に発育していると言われた。出産時にも欠損については知らされず、ただ、未熟児なので保育器に入っており、もって数時間の命だろうと告げられていた。
生後すぐの最も危険な時期を乗り越え、もう9歳になるH君なのだが、当時家族は、フオンさんがきっとショックを受けるだろうと、我が子に手がないことを伝えないでいた。
フオンさんは、クリクリとした目をした、両手のない我が子が退院し、家に帰ってきた日のことを忘れられないという。心はうろたえたが、運命を受け入れようと言い聞かせた。いまこうして生きていることだけで、奇跡なのだから、と。
H君は大きくなると、自分が他の友達とは違うことについて母親に尋ねるようになった。母親は、その理由を説明し、いつもポジティブに生きるよう励まし、勇気づけた。こうしてH君に戸惑いは消え、自分を受け入れて、乗り越えようとするようになった。
生まれが特別だったせいか、生きる力も並外れていた。2~3歳になると歯ブラシを頬に挟んで自分のことができるようになり、幼稚園になるとスプーンを頬に挟んで食べ物をすくえるようになった。9歳になった今は、トイレのサポートが必要なことを除いては、ほとんどのことを自分でできるようになった。
腕で物を掴むことにも慣れたころ、H君は書くことを始めた。「あの子は何でも自分でやりたくて、鉛筆で書くようになって、万年筆で書くようになりました」とフオンさんは言う。
H君の学習意欲はとどまることを知らず、頬にペンを挟んで、文字を美しく書く練習をするようになった。そんな彼のことを友達も先生も愛してやまないが、H君も時には、「みんなのような手足があればいいのに」と思うこともある。
「学校に行くこともできるし、食べることも飲むことも自分でできる。学校は、はじめは大変だったけど、慣れてきた。学校は楽しい。友達に会えるし、遊べるし。お母さんは会社だから、おじいちゃんが送り迎えしてくれる。もっと頑張って進級したい」。小学3年生のH君が語った。