おおぞら幼稚園 には、日本国籍の子どもたちが約80%在籍していますが、残り20%は国際家庭の子どもたちです。日本とベトナム、日本とタイ、日本と台湾、などアジア圏が多いです。ある国際家庭の保護者の方から「ひらがなを教えてくれないか」という要望をいただきました。文科省の幼稚園教育要領には、授業のような形で国語や算数を教えることは織り込まれておらず、本来幼稚園では実践していません。幼稚園では、幼児期の子どもにとって、遊ぶことが全て学びにつながるアクティブラーニングと考えています。今回のリクエストに対しては、幼稚園の保育とは別に切り離して考え、保育が終わった後に短い時間ではありますが、ひらがな学習に重きを置いたお教室を始めることにしました。
どんな形でひらがな教室を行おうか迷いました。1時間といえども、子ども達が飽きずに学習に向かうにはどうしたらいいかを考えました。一回で習う文字は2文字。あとは、迷路や、クロスワードのようなパズル、ハサミを使っての製作のようなものを混ぜることにしました。
保育中は時間割がありません。子どもにひらがな教室と普段の幼稚園の活動が違うことを意識させるために、「おねがいします」の挨拶から始まり「ありがとうございました」の挨拶で終わるというお教室の意識も持たせることにしました。
Aくんはひらがな教室の1日目にどんなことが始まるのか、期待してやってきました。全てが初めてなので、1回目は飽きることなく終了しました。
2回目終了後、お母様から「あしたはWorkがある?」とAくんが家で何度も聞くと話を伺いました。Workと聞いて最初はなんのことか分からなかったのですが、ひらがな教室のことを言っていたということが後日わかりました。
また、ひらがな教室は保育室を使用するため、机・椅子の準備を教員がやっていたのですが、驚くことに2回目からはAくん自ら机の準備を始めました。椅子も日によって、先生と向かい合う配置だったり、隣にする配置だったり自分で決めています。ノートの準備よりも先に机の準備をするという気持ちにこちらが驚かされました。Aくんは朝登園すると今日はWorkがある日かどうかを確認しに来ます。
ひらがな教室が始まって3ヶ月が経ちます。週3回のペースなのでまだ50音の途中ですが、Aくんは字が読める喜びを確実に感じていています。登園すると絵本を持ち出し、読めるところを拾い読み、書けるようになったひらがなを組み合わせ、友だちの名前が書けると大喜び。(すでに自分の名前だけは書けていましたが)
私は、自分自身が幼い頃の勉強への意識はどうだっただろうと振り返りました。しかし、Aくんのようにこんなに学習を楽しみに待った記憶は、私の場合、悲しいかな、ありません。
先日、Aくんのお父様から、こんなメッセージをいただきました。
何かを学ぶとき、楽しく学ぶというのは、理想だと思います。園長先生から日本語を教わるようになってからは、家に帰ってきても、「パパ、<か>はこうやって、こうやって、こうでしょ」と身振り手振りで、覚えたてのひらがなを書いてくれます。楽しいんだろうなと想像していました。 また、親子面談の時に担任の先生から、ひらがな教室の前に、自分で椅子や机を準備しているという話を聞いて、びっくりしました。園長先生のひらがな教室でこれからも学ぶことの楽しさをたくさん感じてほしいと思います。そうすれば、将来、自分が興味を持ったことを、どんどん学んでいけると思います。 |
幼い子どもが私達大人に教えてくれることはたくさんあります。今回私はAくんから、改めて「学習する喜び」を教えてもらっています。「勉強が楽しい」「学ぶことが嬉しい」、こんな気持ちを持って成長していく子どもは、今後どんな学びをしていくだろうかと非常に楽しみです。「子どもから学ぶこと」を皆さんもこれからたくさん味わってほしいと思います。