「休暇で地元に帰省したあのとき、村の井戸の前を通りかかると、水を運んでいる人たちが見えました。すると突然、見たことのある顔と姿が目に入ってきたんです。挨拶をしたら、ディエンビエンの戦場で出会った、米運びの少女だとすぐにわかりました。(同じゲアン省出身でも)家は遠いものとばかり思っていましたが、実は近かったんですね。聞いてみると、なんとご近所さんで、2人の家は畑1つを隔てただけの距離だったんです」とタインさん。
(C) tienphong |
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休暇中、タインさんは何度もランさんの家をたずね、2人の間に少しずつ恋愛感情が芽生えていった。しかし、休暇が終わると、タインさんはまた部隊に戻っていった。
離れている間、手紙も思い出の品もなかったが、それでも2人の愛は変わらなかった。それからさらに数年後、やっとタインさんの部隊の条件が整い、晴れて2人は結婚することとなった。
「生涯、軍人としての任務で家を空けていました。彼女は1人で家庭を管理し、3人の子供たちの面倒を見てくれました。今はすっかり白髪になってしまいましたが、家の中はいつも彼女の冗談や、子供たちと孫たちの笑い声で賑やかです」とタインさん。
ランさんは、結婚生活を長続きさせる秘訣について笑いながらこう語る。「60年も一緒にいますが、私たちは一度たりとも大声を張り上げたことはありません。だって、お互いに理解し合っているし、お互いなしでは生きていけませんから。結婚生活で最も重要なことは、理解することと譲歩することです。心からの愛は、お金で買うことはできません。2人を結び付けるのは、心と愛なんです」。
時が経ち、今やタインさんとランさんの髪は真っ白になり、顔にはシワやシミができている。それでも、お互いを見つめるその目は、昔も今も変わることなく幸せと信頼、愛に満ち溢れている。