2000年11月のある日、多くの警備車両が店の前の通りを取り囲んだ。その数時間後、クリントン大統領が到着し、2階の席に着いた。そのときになって初めて、タンさんの家族はクリントン大統領が自分たちの店を訪れるという話が本当だったと信じることができたのだった。
(C) dantri |
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クリントン大統領は、鶏肉のフォーとマンゴーのスムージーを注文し、舌鼓を打ったという。クリントン大統領から料理について直接のコメントはなかったが、最後の1口まで平らげ、店のシェフやスタッフたちと積極的に写真を撮影した。そして、店のバルコニーに立って人々に手を振ったりもした。
クリントン大統領が訪れてから、フォー2000はますます有名店となり、20年以上の間に多くのスターや著名人、海外の政治家などを迎え入れてきた。タンさんは、村山元首相やタイの王妃、ボー・バン・キエット元首相、ボー・グエン・ザップ大将などから、直々に食事会の料理長に指名された。
しかし、タンさんの成功までの道のりは決して平坦ではなかった。1990年代、タンさん夫妻は高級レストランビジネスの先駆者の1人で、「ル・メコン(Le Mekong)」や「ベトナムハウス(Vietnam House)」、「レモングラス(Lemon Grass)」、「ダラットハウス(Dalat House)」、「ブルージンジャー(Blue Gringer)」、「シェフラップ(Chef Lap)」など、多数のレストランチェーンを保有していた。
しかし1998年、アジア通貨危機によりタンさんのビジネスも深刻な影響を受けた。そこでタンさんは、層を問わず誰でも手頃な価格で楽しめ、かつ民族の伝統を受け継いだファストフードビジネスを始めることにした。
ベトナムにはフォーやブン、春巻、フーティエウ、バインカイン、バインコット、バインセオなど数えきれないほど有名な料理があるが、タンさん夫妻がこの中から選んだのはフォーだった。