傷跡にタトゥーを入れた女性は、徐々に自分の身体に自身が持てるようになり、海に行ってビキニ姿で写真を撮ることもできるようになった。
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それぞれの傷跡には物語がある。客の話を聞いたり、傷跡に触れたりする中で、ゴックさんはネガティブな感情の沼から抜け出せなくなる時期もあった。人生のバランスが取れなくなり、ストレッチマークや帝王切開の傷跡を見ては、出産が怖くなったりもした。
そうした感情に直面し、ゴックさんは自分の人生のバランスを取り戻すため、旅行に行って色々なものを見聞きしたり、自分のエネルギーと経験を満たすために副業をしたりした。
そして、自分自身のバランスを取り、客と経験を共有しながら、ゴックさんは心を開いてあらゆる話に耳を傾けられるようになった。「タトゥーは美容的な方法というだけでなく、心理的・精神的な傷を治癒する方法でもあるんです。誰かの助けになれるなら、誰かと分かち合えるなら、いつでも受け入れる心の準備ができています」とゴックさんは語る。
この10年間で、ゴックさんは傷跡を覆うタトゥーを2000件以上も手掛けてきた。客はベトナム国内だけでなく、海外からも訪れる。日々学ぶことを止めることなく、知識と技術を磨き、どんな複雑な傷跡にも対応できるように努力を重ねている。
そんなゴックさんは今年、米経済誌フォーブス(Forbes)の「アジアを代表する30歳未満の30人(30 Under 30 in Asia)」2022年度版で「アーツ部門」に選出された。ゴックさんは「肩書にプレッシャーを感じることはありません。良い仕事をしていれば、価値が生まれるんです」と語る。
ゴックさんは、将来的にビジネスを拡大し、スタジオを改修し、さらには仕事に役立つよう心理学も学びたいと考えている。また、タトゥーに関する自身の経験や技術、知識を、タトゥーアーティストを志す若者たちに伝えていきたいという。
彼女は、母親から言われた「良いことをしているときは、それを続けなさい」という言葉の通り、有意義な仕事をさらに広げていくつもりだ。