焼き上がりを待つ間に少し座ってお茶を飲み、タバコをふかしながらトーさんは遠くを見つめ、ニャチャン市の伝統的な窯焼きバインミー作りはいつか消えてしまうだろうな、と言った。今の若い世代はバインミー作りよりもむしろ他の仕事を好むからだ。「うちには息子が2人いますが、この仕事は大変で収入も多くないからと、2人とも父親の仕事を継ぐ気がないんです。上の息子なんて、窯焼きならやらないけれど、私が電気オーブンを買うなら継いでもいいと言っています」とトーさんは打ち明けた。
(C) thanhnien |
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ニャチャン市のバインミー工房はどんどん増えているが、昔ながらの窯焼きの工房はほとんどない。今から20年ほど前は、あちこちの窯でふっくらとした黄金色で香ばしいバインミーが次々と焼き上がっていたが、時が経つにつれて混ぜ物をするところが増えた。バインミーを大きくふくらますために添加物を加えて、見た目はふっくらしていても中が空洞ということもある。今や、伝統的な製法を続けている人はごくわずかだ。
トーさんの工房では1日に1000本から2000本のバインミーを焼くだけで、利益はほとんどないが、客に商品を引き渡す時間に間に合うよう、朝の3時から作業をしている。トーさんは晴れの日も雨の日も、同じように時間通りに仕事をする。
「他のバインミーと比べて、私が作るバインミーは炭の香りがして香ばしいんです。炊飯器で炊いたご飯と窯で炊いたご飯が違うのと同じです」とトーさん。
電気オーブンに切り替えるつもりはないのかと聞かれると、トーさんは父親が残した昔ながらの製法を続けたいのだと答えた。それに、客も窯焼きバインミーが好きだからこそ、これからもこの製法を続けていくという。