以前は自宅に田んぼがあり、ヒエウさんは祖父母が耕すのを手伝い、収穫した米を食べ、残った分を売って本や服を買っていた。しかし、2018年に祖父が脳卒中で倒れて半身不随になってから、田んぼは人に貸し、貸し賃として数袋分の米を受け取っている。
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(C) vnexpress, ヒエウさん(右)とガイさん(左) |
「食べる分だけで精一杯で、余るお金なんてありません」とガイさん。家族の食べ物や薬は、庭で採れた野菜と、精神疾患の患者に給付される50万VND(約2550円)に頼っている。
食事に肉や魚が出ることはめったになく、市場で最も安く買える卵や豆、野菜のメニューが繰り返される。ガイさんは孫にこう教えた。「もしあなたが何かのポジションやステータスを得たいのであれば、自分でお金を稼ぎなさい。絶対に人頼みにしてはいけないよ!」。
前の年、夫を亡くしたガイさんは、心臓弁に問題が見つかり、あっという間に体調も悪化していった。数歩歩くたびに座って息を整えなければならず、料理から母親の世話まで家の中のことはヒエウさんがやるようになった。
午前は学校に行き、午後は帰宅して祖母がカシューナッツの皮をむくのを手伝い、夜遅くになってから自分の勉強に手を付けた。カシューナッツは1kgあたり2万VND(約100円)の収入になり、多い日では5kgを売った。収入のほとんどは祖母と母親の薬代に充てた。
この18年間ずっと変わらない、ヒエウさんの最も大きな願いは、いつか母親が自分のことを息子として認識してくれることだ。良い成績をとったときや学校から賞をもらったときには母親の部屋のドアの前に立ち、母親に向かって大声で報告した。それに対して母親はというと、絶え間なく笑い声をあげるか壁に頭を打ち付けるかだった。
高校3年生のとき、ヒエウさんはギアハイン高校の選抜クラスにいたが、卒業後は大学には行かず就職するつもりだった。「祖母はとても苦労しています。自分もお金を稼いで祖母と母の面倒を見たいんです」と、ヒエウさんは担任教師に希望を告げた。
「運命を変えたいのであれば、勉強する以外に方法はないわよ。頑張りなさい。先生たちも友人たちも、いつでもサポートするから」と担任はヒエウさんにアドバイスした。担任はヒエウさんの力を見込んでおり、学校も困難な状況にある生徒のための奨学金をヒエウさんに優先的に支給した。
友人たちは卒業試験に向けて学校の補習授業を受けていたが、ヒエウさんは授業料が支払えないため参加せず、自宅で1人で勉強していた。わからないところがあれば友人に聞いて教えてもらった。このようなヒエウさんの状況を知った教師たちは、ボランティアで教えると申し出てくれた。