毎朝7時にトゥーさんはホーチミン市4区のトンタットトゥエット(Ton That Thuyet)通りの一角に姿を現し、人々が古着をもらいに来るのを待つ。9時を過ぎると市内の病院や市場などあちこちを回って古着を配る。
(C) thanhnien |
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11~12時ごろに自宅へ帰って一休みし、午後になると今度はニャーベー郡の工業団地の周辺を回る。1日の移動距離は50km近くになる。
トゥーさんによると、4年間もこの活動を続けるのは簡単ではなかったという。各地から集まってくる古着以外の費用はすべて自費で、子供たちが渡してくれる老後のための資金から拠出している。
トゥーさんの妻のレ・ティ・ベーさん(67歳)は自宅近くの市場の一区画で商売をし、トゥーさんが安心して古着を無料で配れるようにすべてを工面している。
「最初は私も彼のことが心配でした。身体が弱くて、暑い中や風の強い中を出かけるのも大変ですから。でも、彼が決心したので、私も何でもしようと思いました。彼がたくさんの人に喜びを与えていて、私も嬉しいです」とベーさんは打ち明けた。
応援してくれる人々がいる一方で、トゥーさんの活動を奇妙な目で見る人々もいる。「子供や孫くらいの歳の人から、他人事の世話をするなんて頭がおかしいんじゃないかと嘲笑されることもあります。私もこの歳ですから気にしませんが、自分の理想と心に従ったことをすればそれでいいんです。この活動をすることで、私の人生はより有意義なものになっています」とトゥーさん。
トゥーさんの三輪バイクに気付いて、ニャーベー郡でスルメを売っているグエン・バン・コーさん(56歳)が駆け寄り、何枚かTシャツを選んだ。コーさんは近くで4年ほど商売をしているが、商売を始めたころにトゥーさんの古着カーを初めて見かけていた。
「トゥーさんから古着をもらうのは2回目です。主にTシャツを選びました。人の生活を助けるボランティアなんて、誰にでもできることではないですよ。本当に感心しますし、憧れます」と話してから、コーさんはトゥーさんと握手してお礼を言った。
古着を手にした人の明るい表情を見るとトゥーさんは、自分が好きなことをし、夜は家族と一緒に過ごす今の自分の人生が、完全に満たされていると感じられるのだという。