先のズンさん一家も、以前は庭におよそ50本のカカオの木を植えていた。収穫したカカオの実は郡内のカカオパウダーの製造会社や小規模なキャンディ工場に売っていたが、1kgあたりの価格は2000VND(約9.2円)にも満たなかった。
(C) vnexpress |
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サミーさんが工場を開いて以来、ズンさんはサミーさんに良質なカカオ豆の発酵方法を教えてもらい、多くの地元の人々からもカカオの実を購入し、発酵・乾燥させてサミーさんに市場価格よりも高く買ってもらっている。「サミーさんはこの地域のカカオの木を生き返らせたんです」とズンさん。
2017年初め、機械の順調な稼働と、30年以上も前のチョコレート作り教室の講義の知識から、ついにチョコレートの第1号が誕生した。サミーさんはまず、できたてのチョコレートをカカオ生産者たちに配った。ズンさんは「自分の家で育てたカカオの木から作られた美味しいチョコレートを食べられる日がくるなんて思ってもみませんでした」と話す。
最初のチョコレートはまだ完璧ではなかったが、サミーさんは多くの人に意見を聞いてフィードバックをもらった。そして、チョコレートと抹茶の粉やイチゴの粉を組み合わせたり、チョコレートにフィリングを入れたり、様々な製品を作ろうと研究を重ねた。
「チョコレート作りは料理をするようなもので、今日うまくできなかったら明日また作り、これを足してみたりあれを減らしてみたりと試行錯誤です」とサミーさんは例えて言った。サミーさんは妻であるキミー(Kimmy)さんへの感謝を込めて、自分の「Made in Vietnam」のチョコレートブランドに、「キミーズチョコレート(Kimmy’s Chocolate)」と名付けた。
しかし、ここ1年ほどは脳梗塞の影響で歩行が難しくなり、全国の見本市や展示会に出向いて製品をPRする体力もなくなってしまっているが、自身のレシピと経験は工場の工員たちに伝えてあるという。カナダにいる妻や子供たちのこともとても恋しいが、ここ1年近く会えていない。
様々な流通チャネルを通じて製品を販売するほかにも、サミーさんは国内外の観光客が工場を見学できるようにしている。「外国人観光客がベトナムを訪れて、ベトナム産のチョコレートを買ってお土産にするんです」と、サミーさんは希望に満ちた声で語った。