ザンさんの古本修復の秘訣は、タピオカ粉から作った糊を使うことだという。「タピオカ粉は乾くと普通の接着剤よりも強力です。いったん貼りつけてから乾くまでの間に微調整することもできます。普通の接着剤だと貼りつけてすぐに固まってしまうので、紙が破れやすいんです」。
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ザンさんがこの仕事で最も楽しいと感じるのは、客から修復を依頼された本を、どうにかして「そっくり元通り」にすることだ。表紙がぼろぼろに破れていたとしてもそれを残し、新しい表紙に付け替えることはしない。「この仕事はおもしろいですよ。たくさんの本を試しに読んでみて、色々なことを知れますから」。
ザンさんの馴染み客は、市内の古本屋が多い。1区グエンカックニュー(Nguyen Khac Nhu)通りで古本屋を営むタンさんもその1人だ。「最初は糸がほつれて表紙も破れ、今にもばらばらになりそうだった2冊の古本が、ザンさんに直してもらうとしっかりと製本されました」とタンさんは語る。
ザンさんは、毎日16時には仕事を終える。本を製本するときにページをぎゅっとおさえるのに手指を酷使するため、手指の関節が痛む。関節を緩めて脳をリラックスさせるため、ザンさんはギターを弾く。ザンさんは「歌はうまくないので、いつもテレビで歌手が歌っているのを聴きながら、それに合わせて弾くんですよ」と言って笑った。