ゾウはとても知能が高く繊細な動物で、重労働の使役環境下での繁殖は非常に難しい(*3)。新しいゾウは、よって野生から捕獲調達されてきた。
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大きなゾウは捕獲も調教も困難なので、赤ちゃんゾウを罠で仕留める(*4)。その多くは、ようやく一人歩きを始める3~4歳の子供だ。突然母親を失った彼らは、パニック状態で攻撃的になる(*5)。調教するにはまず、人への絶対服従を理解させなくてはならない。捕らえられた小象はすぐに四肢を縛られ、餌も水もなしに手鉤や刃物で暴力を受け続ける“クラッシュ(破壊)”の洗礼を受ける。数日から数週間続くこの工程で、小象は精神的・肉体的恐怖で完全に“破壊”される。
ゾウは賢く記憶力が強い。この記憶が彼らを一生支配し、手鉤を見るだけで人の指示に従う使役象とさせるのだ。野生の動物には、人の指示に従う本能も経験もない。“象乗り”のゾウは、優しさや友情で観光客を乗せて歩くのではない。何十年も所有している自分のゾウに乗るときでも、象使いは必ず手鉤を持ち、人が乗っていない間のゾウの足は、重い鎖で縛られている。
*3:ベトナムでは使役象の出産の記録は40年間ない。
*4:罠は、落とし穴や、茂みの中に仕込んだリング式ワイヤーで足を挟むものが多く、発見・保護されても足の傷のせいで死に至る例も多い。象の狩猟・捕獲は、1996年以来法律では禁止されている。
*5:アジア象の家族の絆は強く、メスは寿命約60~70年の一生を、家族の群れと共に過ごす(雄は8~13歳で独立する)。妊娠期間は約22か月(哺乳類の中で最も長い)で、一度に一頭しか出産しない。2年近くお腹の中で育まれた赤ちゃんは、半年以上母乳で育てられ、乳離れには3~5年かかる。母親はその間は次の妊娠をせず、小象は群の全員に守られ、大切に育てられていく。知能の高さだけでなく、社会性や仲間の死を悼む行動等、感情的にも高度な繊細さを持つことが確認されている。
象乗り観光 歩かない間のゾウは鎖でつながれている。
このゾウは、左右の前足に鎖をかけられ全く動けずにいた。