ゴ・バン・ティエンさん夫妻が、生活のために故郷の南中部沿岸地方フーイエン省からホーチミン市に移り住んだのはかなり前になる。今は同郷の人々総勢38人で、一軒の家で暮らしている。
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ティエンさんは最初、石工職人として働いていた。ある時親戚の人から、生活が苦しい故郷の人々をホーチミン市に連れて行き、宝くじを売る仕事をさせてはどうかと話を持ちかけられた。帰郷した際に状況を探ってみると、1日当たり数万VND(数百円)の日銭で厳しい暮らしをしている人が多いことが分かった。彼が宝くじ売りの話をすると、すぐに反応が返ってきた。
それからはティエンさんを頼りにホーチミン市に移り住む人が増えていった。1区のグエンバンクー橋近くの路地に一軒家を借りたが、面積は20m2ほどしかなく文字通り身を寄せ合って暮らしている。ここにいる人のほとんどは高齢者や障害者だ。
ティエンさんによると、皆にそれぞれの事情があるという。「例えば73歳のグエン・バン・サウさんは事故で片足を失いました。2009年には台風による洪水で、娘と2人の孫、さらに家財も全て奪われました。そのショックでサウさんの妻は精神を病み、別の娘の元で暮らしています。サウさんはここで生活費を稼いでいます」