蓮茶作りは、早朝に蓮の花を買い付けに行くところから始まる。スオンさんは朝5時に起きて、タイ湖の蓮畑へ向かう。蓮の花を持ち帰ったら、外側にある花びらを剥がし、おしべを取る。次に、おしべから、蓮茶作りの主な原料となる白いガオセン(「蓮の米」、おしべの先ぶあるやくの部分と花の内側の小さな花びら)を取っていく。もちろん全て手作業だ。そして、取り終えたガオセンとお茶の葉を混ぜ合わせて、紙の蓋をして1日熟成させる。その後、蓮茶の品質や香りを長く保つため、一定の温度で乾燥させる。蓮の花200輪から、2日かかってやっと1kgの蓮茶ができるという希少さだ。
(C) vietnamnet 早朝から蓮の花を仕入れる |
(C) vietnamnet 「ガオセン」を手作業で取る |
(C) vietnamnet 「ガオセン」を手作業で取る |
(C) vietnamnet お茶の葉と混ぜて熟成させる |
また、蓮茶作りに用いられるお茶の葉は、西北部ソンラ省のタスア茶や東北部タイグエン省のタンクオン茶といった、有名な産地で調達したものでなければならない。更に、蓮茶作り用の蓮の花は、日の出前に摘んだ、花びらがまだ大きく開いていないものだけを選ぶ。蓮の花は、花びらが開くと独特の良い香りが飛んでしまうためだ。
蓮茶作りへのこだわりは、それだけではない。蓮茶を作る人は清潔でなければならず、かつては「月経中の女性は蓮茶作り用の蓮の花を摘んではならない」とされていた。洗練された文化の物忌みとして不文律になっていたというが、この考え方は今ではもうほとんど残っていない。
タイ湖の蓮茶作りを専業にする人々にとって、最大の問題は原料となる蓮の花の供給が不足していることにある。タイ湖は広いが、このうち蓮畑は面積の小さい区画がたった4~5か所あるだけ。また、蓮の花が咲くシーズンは約3か月間しかないため、蓮茶の原料調達は極めて難しいのが現状だ。
スオンさんは、「国内には様々な種類の蓮の花があるが、タイ湖で育てられた蓮の花の香りに及ぶものはない。タイ湖の蓮の花で香りをつけた蓮茶は、他のどんな蓮茶にも勝る『本物の蓮茶』なんだ」と話す。