地元の東南部ビントゥアン省ファンティエット市ムイネーに戻り、カイトボードを楽しむオーストラリア人観光客の手伝いをするようになった。しかし雇い主は、ベトナム語の読み書きもできない彼の無学さを知ってびっくり仰天。
(C) thanhnien |
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仕事を失うわけにはいかないと、小学校1年生の教科書から勉強し直した。それまで握ってばかりいた拳でも酒でもなくペンを握り、来る日も来る日も根気強く読み書きの練習をした。英語も仕事中に雇い主の言葉を聞いて覚えていった。英語の読み書きはできなかったが、意思疎通ははかれるようになった。
彼の努力を買った雇い主は、カイトボードをただで教えてくれるようになった。漁に出ていた頃に培った、海上でバランスをとる方法や、風や波を読む方法が役に立ち、水を得た魚のようにみるみるうちに上達した。
カイトボードの資格を習得し、たった2、3年で、ベトナムでは数少ない国際資格を持つトレーナーに成長した。そしてカイトボードの大会「キング・オブ・ムイネー」で優勝を重ね、カイトボードの王者として有名人になった。
2011年、世界25か国から100人以上が参加するKTA(カイトボード・ツアー・アジア)が開催された。6か国で開催され、6回の総合得点で順位が競われる。彼は4回しか参加できなかったというハンデをものともせず、スピード得点で1位、技術得点で3位、総合得点で3位という輝かしい結果を残した。これによって、彼はフリー・カイトボード部門の世界ランキング72位にランクインした。