ハンさんはアインさんを連れて紅河デルタ地方ナムディン省に移って、野菜を売り歩いた。わずかばかりの資金が貯まると、故郷に戻り小さな沼のある土地を買い、掘っ立て小屋を建てた。苦しい生活に絶望したハンさんは、自分が死んだら息子を孤児院に入れるよう母親に書き残して入水自殺しようとした。ところが漁をしていた老人に助けられ、励まされる。
、現在のハンさん |
(C)Tuoi tre, ドキュメンタリー映画「Chuyen tu te(英題:Living As One Should)」の一場面 |
ハンさんは病気で死ぬ前に、アインさんに家だけでも残したいとレンガを積み始めた。映画に描かれたのはその頃のことだ。生きる希望を見い出した彼女は、沼で魚を庭で豚を飼い育てた。経理の知識もあって徐々に生活が楽になり、1990年代前半には2階建ての家を建てた。
アインさんもハノイ国民経済大学に入学し、万事順調に行くかと思った矢先、アインさんが低酸素脳症にかかってしまう。ハンさんは病院を駆けずり回って、アインさんを回復させた。彼は数年前に結婚し子供にも恵まれ、さらにシロアリ駆除会社を設立した。
その後ハンさんは村一番の豪邸を建てて、ようやく苦しい過去を乗り越え、幸福を手に入れた。だが、最も嬉しいのは豪邸に住めることではなく、息子が立派に成長したことだという。敷地の片隅には、映画に出ていたあのレンガ作りの家が今も遺跡のように残されている。