工房を開いてから一番の思い出は、花束を抱えた少女を描いた作品を、まだ額にも入れてない未完成な状態だったにもかかわらず、ある顧客がたいそう気に入って、35万ドンで購入してくれたことだという。「あのときの感動が忘れられないから、私はこの仕事をずっと続けていきたいと思うのです」とヴィさんは語った。
(C)NLD,ヴィさんのペーパークイリング工房 |
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工房の経営が安定してくると、ヴィさんは自分と似たような境遇にある障害者を支援するため、ペーパークイリング教室を開くことにした。「ペーパークイリングは、退屈な仕事ではありません。それどころか1か所に座って手を細かく動かしているだけで、自分一人を養うだけの収入を得られるのです」彼女は障害者に自立の道を探り、希望を持って笑顔で生きて欲しいと語った。
ヴィさんにペーパークイリングを習った一人に、ダクラク省出身で肺がんを患っている女性がいる。彼女は治療のためにホーチミン市に来た際、ヴィさんの作品を見て、その技量に感動し、わざわざ工房を探し出してまで習いに来てくれたのだという。
「苦しんでいる人たちの助けになりたいのです。私も彼らも境遇はよく似ていて、だれもが奮闘しています。小さな紙片を通じて人生を愛することを伝えたいのです」
そう話しながら、ヴィさんは色とりどりの細長い紙をクルクル巻いて小さな渦巻状にし、それを思うままに組み合わせながら図柄を構成していく。何の変哲もない数本の紙切れが、みるみる美しい絵に変わっていった。それはまるで魔法のような光景だった。