ガーを常に支持してくれていたチュオン・チン氏は1988年に急死する。それは彼女にとってショックだったが、自分自身と対面し生活を見直すきっかけになった。自分がやるべきことを為す時がきたと思った彼女は、準備期間を経た1990年に「ハンガーの別荘」を着工する。
(C) Tien phong, Tran Nguyen Anh |
建築に対する見方を変えたいと考えたガーは、通常の長方体の建物ではなく巨大な木の幹に無数の穴が開いたような奇妙な外観の建物を作った。そのため「ハンガーの別荘」は「ツリーハウス」や「クレイジーハウス」と呼ばれるようになった。しかしダラットの景観に合わないとの声が高まり、取り壊されそうになったこともあった。「クレイジーハウス」をガーが買い取ることになり、危うく難を逃れた。
「クレイジーハウス」は2007年になってようやく建築物として当局に認可された。今では年間10万人が訪れる観光スポットになっている。ただ、今も建築は続行中だ。ガーは最後にこう語った。「これは決して完成しない作品です。創造こそが私の喜びですから」(敬称略)