第38回万国郵便連合(UPU)手紙コンクールで、中部ダナン市にあるグエンフエ中学校2年生の女子生徒グエン・ダック・スアン・タオが最優秀賞を勝ち取った。このコンクールはベトナム郵政総公社が、情報通信省や教育訓練省などの後援を受けて主催している。
コンクールのテーマは、「労働条件の良さがより良い生活をもたらす可能性について、誰かに手紙を書いて伝えること」。タオはグエン・ミン・チエット国家主席に宛てて、労働安全の問題を訴えるある少女の話を書いた。工員の父親が労働災害に遭い脊髄(せきずい)に障害を負って歩くことができなくなり、母親が家計を支えている−そんな境遇の少女に自分を見立てて手紙を書いた。
父親がかつての同僚たちに会えば、少しは気がまぎれるだろう。少女はそう考えて父親を昔の職場に連れて行った。しかしそこで少女が目にしたのは驚くべき現実だった。「掘っ立て小屋のような工場、工員の健康や命は常に危険にさらされている。製品を置く棚は不安定で、十分な明かりもない。工員たちは粉じんや騒音から身を守る労働安全用具も与えられていない。それなのに工員たちは働かざるを得ない。高い賃金を得るため? 十分な衣食住のため? 私は疑問に思う。どうして父はこんな環境の中で働かなければならなかったのか? どうしてこんなにひどい労働条件の工場が活動を許されているのか? 父や同僚たちがこのままここで働き続けたとして生活は向上するのだろうか? また労働災害が起こってよりどころをなくす家族が出ないだろうか?」
実際のタオの家族の状況を知ると、彼女の手紙が深い感情をたたえている理由が分かるかもしれない。彼女の母親はダナン市内の中学校の食堂で働いていて、毎朝午前4時半に家を出る。父親はかつて教師をしていたが、少しでも高い賃金を得ようとさまざまな仕事に携わっている。一方タオは家族の経済状況が厳しいことが分かっているので、学費のかかる補習は受けていない。それでも小学校1年生のときからずっと「優秀生徒」の称号を得ている。そんながんばり屋さんだ。