頭部負傷で記憶喪失、40年ぶりに故郷に帰還

2007/11/18 08:58 JST配信

 1967年に軍に入隊しその翌年に戦死したとされていた男性が、40年もの月日を経て故郷に帰還した。男性の名はグエン・ソン・タオ、北中部ゲアン省フングエン郡の貧しい農家の5男として生まれた。

 タオは19歳の時入隊。1968年に中部フエでの戦闘で頭部を負傷する。村人に助けられ命を取り留めたものの記憶を失ってしまった彼は、放浪のすえ南中部カインホア省にたどり着き、そこで電気修理工をしていたグエン・バン・チュックという男性の世話になる。タオの家族の元には戦死通知が届き、1977年には国から「烈士」の称号が贈られた。

 「身体は回復していったが、記憶はあやふやなままだった。ゲアン省ということ以外、故郷について何も思い出せなかった」。タオはチュック氏の商売を手伝いながら電気修理の仕事を覚えていき、1979年には結婚して3人の子どもを授かる。1980年に生まれた長女は現在ニャチャン市で旅行関係の仕事に就き、翌年生まれた長男は枯葉剤の影響で体が不自由のまま昨年26歳の生涯を閉じた。1991年に生まれた次女は生後3日で亡くなり、名前をつけるのも間に合わなかった。家族は現在、ニャチャン市に住んでいる。

 一方タオの両親の家では、子どもたちが次々と独立し、母親はお墓さえどこにあるか分からない息子のことを思って悲しみにくれていた。年老いて痴呆気味でもあり、毎晩徘徊しては息子の名前を呼んでいた。

 今年の9月19日、タオは突然帰郷した。妹のグエン・ティ・ニュンさんが最初に気づき、「兄さんが帰ってきた!」と叫んだという。兄弟たちは再会を喜び合い、近所の住民たちも祝福に訪れた。しばらくして、タオは机の上に置かれた母の遺影を見つけた。40年近く行方不明になっていた息子を一目見ることもなく、母は亡くなっていたのだった。父親は1953年、タオがまだ子どものころに亡くなっている。

 タオはこれまで何度も故郷を探そうとしたが、ゲアン省ということ以外何も思い出せなかったという。母親に親孝行できなかったことが何よりも悔しいと涙顔で語った。

[Tien phong online, 24/09/2007, 09:11]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 メコンデルタ地方バクリエウ省ドンハイ郡ロンディエンドン村で22年前に行方不明になったグエン・キム・...
 ベトナムマルチメディア社(VTC)はこのほど、ベトナム戦争烈士(戦死した軍人・従軍者)の遺骨収集お...

新着ニュース一覧

 カンボジア公式訪問を開始したチャン・タイン・マン国会議長は21日、カンボジアの首都プノンペンで、同...
 ベトナム共産党政治局・書記局は20日に開かれた会合で、政治局員・国会共産党連合会書記・国会議長在任...
 ワインの輸入販売などを手掛けるエノテカ株式会社(東京都港区)は11月25日、ホーチミン市1区のホーチミ...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 午後3時、ハノイ市ハイバーチュン区ファムディンホー街区在住のグエン・ゴック・クアンさん(男性・61歳...
 住商アグロインターナショナル株式会社(住商アグロ、東京都千代田区)は、ベトナムの農業資材販売会社で...
 ベトナム最大の企業管理職向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営するアンファベ(Anph...
 南部メコンデルタ地方カマウ省人民委員会は19日、ダムゾイ郡でダムゾイ・カイヌオック・チャーラー(Dam...
 ホーチミン市人民委員会は21日、12月の商業運転開始を予定している都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~...
 21日から23日までの日程でマレーシアを公式訪問中のトー・ラム書記長は21日、最高儀礼に則り盛大に執り...
 ドミニカ共和国を公式訪問中のファム・ミン・チン首相は現地時間20日、ルイス・ロドルフォ・アビナデル...
 米不動産サービス大手クッシュマン&ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield=C&W)がこのほど発表した...
 南中部高原地方総合病院は19日、自宅で調理したヒキガエルの肉と卵を食べた児童2人が中毒を起こしたと...
 ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)傘下の政策開発研究所が先般発表した...
 医療機関向けパッケージソフトウェアの製造・販売を手掛ける株式会社エクセル・クリエイツ(大阪府大阪...
 ハノイ市ナムトゥーリエム区の国立展示建設センター(1 Do Duc Duc, quan Nam Tu Liem, TP. Ha Noi)で、...
トップページに戻る