彼女は「メイクアップ・アーティスト」として各誌で紹介されている。その呼び名は、彼女がアメリカのメイクアップ業界でこれまで積み重ねてきた努力と独創的な仕事に対して贈られたものだ。ティ・コスメティック社のオーナー、テイラー・ファムの顧客名簿にはアメリカの有名芸能人の名が並んでいる。アジア系女性の自然な美しさを引き出すメイクが彼女の特徴だ。
もし彼女が独自のメイクを編み出していなかったら、これほどまで有名になることはなかっただろう。市場の需給バランスを観察し、メイクアップ業界に目をつけた彼女は、欧米の会社が作っている化粧品がアジアの女性に必ずしも合うわけではないことに気が付いた。実際、欧米の化粧品の色のトーンは、アジアの女性には似合わないことが多かった。このことはまさに多くの客がテイラー・ファムの化粧品を求める理由でもある。
現在彼女の会社が販売しているメイク用品や、ファンデーション、口紅、パウダーなどの化粧品はアメリカ市場で好評を博している。アジア人の間だけではなく、『エル』、『マリクレール』、『コスモポリタン』などの有名雑誌でモデルのメイクに使われていないものはないぐらいだ。スター女優キーラ・ナイトレイやスーパーモデルのアレッサンドロ・アンブロッソなども皆ティ・コスメティック社のユーザーだ。マライア・キャリーやシャロン・ストーン、ビヨンセなどトップクラスのスター専門のメイクアップ・アーティストとして知られるビリー・ビーもハリウッドでの仕事で使っている。これは肌の色に関わらず、全ての女性にとってナチュラルメイクは魅力的だということを証明しているだろう。
テイラー・ファムは1979年に家族とともにアメリカに移住した。母親は自分の娘が弁護士か医師になることを望んでいた。母親は美容院で働いていたことがあったが、娘にはその仕事について欲しくなかった。社会的に高い地位にはなれないと思ったからだ。母の意志とは逆に、彼女はメイクの世界に夢中になった。中学の頃、彼女はクラスメートに化粧をしてあげて、いつも先生に怒られていた。母は反対したが、父は彼女に自分の好きな仕事をするように勧めた。父の言葉を励みに彼女は自らの思う道を進んだ。そして1999年にカリフォルニア州にあるギャビラン校のビューティケアコースを卒業した。
抜群の美的センスで、彼女には卒業後すぐ顧客がつくようになり、ブライダルメイク界でも高い評価を受ける。しかし彼女の人気は技術的なことだけによるものではなかった。市販の道具では満足しない彼女は、オリジナルのメイク道具を編み出した。彼女にとっては道具を自分で作ることもまた彼女なりの表現の一つだった。まる3年試験を重ね、ついに2005年の12月にウェブ(www.thicosmetics.com)上での販売を開始した。
今年28歳の彼女には、まだまだ実現したいことがたくさんあるという。7年間必死で努力してきた結果が今につながっている。今後サンフランシスコに大型化粧品販売店をオープンし、同時に日本市場への進出も計画している。