故郷にリゾートを、スイス越僑へのインタビュー

2006/11/12 07:14 JST配信

 海辺のリゾート地として有名な中南部地方ファンティエット市ムイネーにある老舗のリゾートホテル、スイス・ビレッジ・リゾート。オーナーはスイス国籍を持つ建築家ファム・ザー・タン氏である。同ホテルは彼の故郷への想いと、第二の故郷であり、彼を育て、成功へと導いてくれたスイスへの感謝の気持ちから実現した。

 以下はタン氏へのインタビューである。

 何故、スイス・ビレッジ・リゾートをベトナムに建設しようと考えたのですか?

 「私の人生は他の人々より多くの幸運に恵まれていたと思います。40年前の1966年、私はスイスに留学する機会が与えられました。貧しかった私がスイスに渡ってすぐに味わった孤独感や挫折感、劣等感、不安感は今でも忘れることが出来ません。しかし、そんな私を救ってくれたのは、私の中に流れるベトナム人の血、そして伝統だったのです。自分を卑下し、立ち上がる事の出来なかった私に、困難に立ち向かう力、失敗を乗り越え克服する力を与えてくれたのです。

 私はベトナムで生まれ、私の中にはベトナム人の血が流れている。30年近く海外に住み、仕事で成功し、幸せな家庭を築き、海外での生活が満ち足りていたにも関わらず、私の祖国、故郷への想いは薄れることは無かった。しかし、私はスイスに育てられ、教育や様々なチャンスを与えてもらい、それを生かす場所を与えてもらったといっても過言ではない。私はその事を誇りに思っているし、両国の文化の影響を受けることが出来た事に感謝している。そのスイスへの感謝と故郷への想いが、スイス・ビレッジ・リゾートを建設する原動力となったのです。」

 スイスでの仕事は順調だったにも関わらず、なぜベトナムに戻り生活する事を選んだのですか?

 「1990年、海外へ出て以来、初めてベトナムに帰りました。その時点での私のスイスでの仕事はいたって順調だったが、長く離れていた故郷に戻り、懐かしさがこみ上げると同時に貧しい故郷のために何か役に立ちたいという気持ちが沸いてきた。そしてベトナムに投資することが、故郷のために役立つことになると考えたのです。

 当初、ハノイに5つ星ホテルを建設する投資計画を立てましたが、これは実現しませんでした。そして私はその頃はあまり一般的でなかったリゾート開発に投資計画を変更することにしました。その頃の越僑に対する政策は厳しく、計画の進行も容易ではありませんでしたが、15年間におよぶ小康状態の後、事態は一転、「スイス・ビレッジ・リゾート」の投資計画に許可が下りたのです。しかし、私にとって最も喜ばしいことは、そこが多くの外国人にとってベトナム文化に触れ合える場所であり、またベトナムの投資環境視察の場であり…と、訪れる人々にとって魅力的な理想の場所になりつつあるということでした。」

 今後の展望やベトナムの将来について聞かせてください?

 「私がベトナムに戻り生活を始めた頃は、ドイモイ政策が始まってすぐの頃で、時期としては早すぎた感があります。ですから、その頃私のように海外からベトナムに戻った人間が、ベトナムで何かをする場合、法律は複雑で、実現の為には数多くの段階を踏まなければなりませんでした。しかし、幸いにも私は様々な点て恵まれ大きな障害にぶつかることもなく成功し、スイス・ビレッジ・リゾートという大きな業績を収めることが出来ました。私はこれからも引き続き投資事業を行っていく予定です。

 多くの場所を訪れることで、私は世界には多くの固有の文化がある事を知りました。またそれと同時にベトナムをとても美しく、豊かな国だと感じることができたのです。手付かずの自然、海、熱帯の気候、降り注ぐ太陽、勤勉で優しく、徳があり来客に丁寧な人々…どれをとってもすばらしい。そしてこれらは観光業界が発展していく上でなくてはならない大切なものなのです。特色ある文化を発揮し、自然環境を守ることに力を入れていけば、自然と観光業界は発展してゆきます。これが私が観光業界への投資を選んだ理由です。またさらなる発展を目指すためには専門分野や技術の向上、そして人材の育成が不可欠です。

 今後WTOに加盟を控え、ベトナムに対して様々な責務が負わされることになるでしょう。確かにベトナムは他国に比べて未だ発展や繁栄を遂げておらず、遅れている部分があります。しかし、ベトナムにはまじめで賢く我慢強い国民がいる。だから、恐れることなく他国の意見に耳を傾け、他の国々に取り残されないよう改革に取り組んでいかなければならないのです。」

[2006年10月5日 Tien phong紙 電子版]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
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