ベトナム人で初めて上院議員に立候補した40歳の女性弁護士チャン・ホンが、在米ベトナム人コミュニティの間でにわかに注目を集めている。しかし、9月の民主党選挙当選までの道のりは決して楽ではない。目下の強力な対立候補はマリア・カントウェル氏だ。自分よりずっと優勢な対立候補と最後まで戦う決心を固めたチャンへ、各誌も好感を寄せている。
「この戦いの場に出るのは勝つためよ。」チャンは自信を持ってこう語る。しかし、活動資金の面ではカントウェル陣営に全く及ばず厳しい状況のようだ。カントウェル氏はマルチメディア関連会社リアルネットワーク社を所有しており、選挙活動資金としての基金は1000万ドルに達する。それに対しチャンの活動資金はというと、友人や家族や在米ベトナム人コミュニティからの出資でまかなっている状況なのだ。
マリア・カントウェル氏が最も重視しているのがハイテクノロジー分野であるのに対して、チャンの最優先事項は貧困層の権利獲得だ。そもそも立候補のきっかけは、連邦銀行の貧困者支援がここ数年連続で削減されている事実に対する怒りだったという。彼女が法律相談を始めた1992年以降、彼女のところに来るベトナム人は主に貧困に苦しむ人、家庭内暴力や人種差別による就職困難の被害者、身寄りのない老人、ホームレスなどだという。
先日ワシントン州バーションで行われたアイランド・アース・フェアでチャンは演説を行った。この3ヶ月間に渡り彼女は州内各地を訪れ、大学や公共の場で演説活動を行ってきた。もしチャンがカントウェル氏を破れば、次の11月に行われる総選挙において共和党候補マイク・マクギャビック氏に勝利する可能性も非常に高くなる。カントウェル氏に対して劣勢ではあるが、チャンの決意はアメリカにいる同胞たちから好感と期待をもって受け入れられている。それはアメリカへの移民が始まって30年も経つというのに、ベトナム人が政治の舞台において発言する機会が少ないことの現れに他ならない。