ニューカレドニア:「天国に一番近い島」で暮らすベトナム人

2006/04/09 07:10 JST配信

 オーストラリアの東に位置するフランス領の島国、ニューカレドニア。「天国に一番近い島」として知られるこの国にベトナム人が初めてやって来たのは、1930年代のこと。ニューカレドニアは世界有数のニッケルの産地としても有名で、その当時ベトナムを占領していたフランスが、鉱山労働者としてベトナム人を送り込んだのが始まりだ。現在ベトナム人は、ニューカレドニアの人口の1.6%を占め、経済的に成功している人も多い。

 「太平洋のパリ」とも称される首都ヌメアで自動車販売店を営むブイ・ティ・エンさんも、そんな成功者の一人。彼女は移民二世にあたるが、この世代のベトナム人移民のほとんどは、ベトナムにいるベトナム人と同じようにベトナム語を使いこなせると言う。ブイさんの両親の世代は、毎晩教室を開き、若者たちにベトナム語を教えた。「家の中ではベトナム語しか使いませんでした。わたしもいま、自分の子供たちに同じようにさせています。でも子供たちは話すことはできても、読み書きはあまりできません。」

 同じヌメア市内で食料雑貨店を営むグエン・クオンさんは、移民当初の苦難の頃を思い出して語る。「当時のベトナム人移民に対する扱いはひどいものでした。死ぬほど働いても、しょっちゅう殴られたものです」。ディエンビエンフーの戦い(1954年)でフランスがベトナムに敗れた後は特にひどく、フランス人はベトナム人移民に報復しようと、ベトナム語教育を禁止したり、ベトナム人移民の車に爆弾をしかけたりと、嫌がらせをしたという。

 こうした行為に端を発し、ベトナム人移民の間で帰郷運動が興った。最終的にフランス政府は、約 5000人を国へ帰すことに同意。しかし、ベトナムへ帰ることができた人の多くは、自国の厳しい状況に失望することになる。「先に帰郷した人々は、これからベトナムに戻ろうとしている人たちに、島にとどまるよう、何とかして知らせようとしました。でも手紙は全て検閲されていたので、伝える手段がなかったのです。」

 1980年代に入ってようやく、その当時ベトナムへ帰郷した人々の子孫が、ニューカレドニアの親類たちと会うことができるようになる。中にはベトナムから家族を呼び寄せ、暮らしている人たちもいる。現在、ニューカレドニアのベトナム移民コミュニティーでは、教会や寺といった宗教施設を維持するとともに、ベトナム移民が集まる「ベトナムセンター」を設立し、ベトナム語や武術などを教えている。

 フランスの海外領土であるニューカレドニアでは、以前から議論されている独立問題や、都市部周辺では治安の問題もある。しかし、今回取材したベトナム人移民はそろって、「ここでの暮らしに満足している」と言う。この島が「天国に一番近い島」だから? 彼らが実際の年齢よりもずっと若く見えることを考えると、それも本当なのかもしれない、と思えてくる。

[2005年11月15日 BBC Vietnamese.com]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

新着ニュース一覧

 ホーチミン市の洋菓子店「ル・プチ・ローラン(Le petit Roland)」は、南部解放・南北統一50周年を記念...
 南部解放・南北統一50周年(1975年4月30日~2025年4月30日)記念事業の一環として、ホーチミン市1区人民...
 栃木県鹿沼市の市文化活動交流館芝生広場で4月19日(土)、「2025ベトナムフェスティバルinかぬま」が初...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 2025年4月4日、ベトナム戦争末期の米軍による「オペレーション・ベビーリフト」の航空機墜落から50年を...
 米国の半導体大手クアルコム(Qualcomm)は16日、ハノイ市で行われたグエン・チー・ズン副首相との会談で...
 ハノイ市ナムトゥーリエム区の国家会議センターで16日夜、ベトナムにおける3件のプロジェクトを対象と...
 政府は15日、少額取引決済向けのモバイルマネーの試行期間を延長する決議第87号/NQ-CPを公布した。 ...
 ライオン株式会社(東京都台東区)は、ベトナムの持分法適用関連会社で、医薬品・医療機器の製造販売を中...
 レ・タイン・ロン副首相はこのほど、フェニカー大学(Phenikaa University、ハノイ市)を、「構成大学と...
 ベトナム空港社[ACV](Airports Corporation Of Vietnam)は4月19日、4月30
 ブイ・タイン・ソン副首相は15日、「2021~2030年国家電力開発計画及び2050年までのビジョン(第8期電力...
 日本政府観光局(JNTO)が発表した統計によると、2025年3月の訪日ベトナム人の数は前年同月比▲5.0%減の6...
 ベトナム航空局(CAAV)によると、2025年1~3月期の航空各社の旅客輸送量は前年同期比+9.2%増の約2070万...
 ホーチミン市人民裁判所は14日、メンバー6万6000人近くの売春斡旋ルートを組織した元締めのグエン・フ...
 日本の財務省が発表した2025年3月の貿易統計(速報)によると、ベトナムの対日貿易収支は前年同月比2.35...
トップページに戻る