ここ数年、政府は交差点の渋滞緩和のため、バイクの規制に力を注いできたが、車に対する規制を重要視しなかったため、現在ホーチミン市では渋滞対策が最重要課題となる危機に瀕している。
政府機関は、1日50億ドン(約3600万円)もの損害を出していた交通渋滞を緩和するために、躍起となってバイク規制政策に取り組んだため、政策実施年である2001年から2005年までの間、バイクの登録数は減少、一定の効果を生んだ。しかし、バイクの登録数に反比例するように、車の登録台数は、ここ数年で2倍以上に膨れ上がった。2000年の時点で13万1000台だったのが、2005年には、27万5000台を超えている。
交通監査局のヴォ・ヴァン・ヴァン副局長によると、車の登録はバイクよりも簡単で、IDカードの提示だけで済んでしまうのが原因だという。現在、中国から仕入れた安価な部品をベトナム国内で組み立て生産しており、2006年には、輸入関税が100%~90%に引き下げられるため、車の販売価格の値下がりに伴い、さらに車の登録台数が増え続けると見込まれている。
現在、1日あたり四輪車平均登録数は、100台を越えるという。バイク1台が走行中に占拠する道路面積が3平方メートルであるのに対し、車1台のそれは22平方メートルであるとすると、大げさに言えば、毎日道路を拡張していかなければいけない、ということだ。この1年、政府は通勤・通学ラッシュ時刻の大型車両の通行規制を行ってきたが、ナム・キー・コイ・ギア通りや、パスター通りなど、市内の主要道路は赤信号になると、途端に車が何百メートルにも渡って長蛇の列をつくる。
南部交通発展研究センターのレ・クア教授によると、現在バイクを使っている人数のうち僅か7%が車使用に切り換えただけで、市内の道路は車に占拠され、バイク都市ホーチミン市は「歩行者都市」にならざるを得ないという。まずは、市内中心部に交通規正法を設け、徐々に周辺地域へ広げていくようにし、将来的には、市民の足となる公共交通機関の発展を目指さなくてはならない。
他方、ホーチミン市人文社会科学センターのホー・フー・ニュット教授は、これまで一般の人を対象にしたシンポジウムなどで意見交換ををした際には、「1家族に1台だけの四輪車登録を認め、免許証所持者のみが車両登録できるような制度を作るべきだ」、という意見も出された、と話す。しかし、前出のヴォ・ヴァン・ヴァン副局長は、「そのような意見に共感できないこともないが、免許証所持者だけの登録制度を導入すれば、タクシー会社や、病弱者、障害者がドライバーを雇って車を購入したいときはどうするのか、という問題が浮上する」と話している。