今月9日、ホーチミン市内で行方がわからなくなった6歳の男の子が1,200km離れたクアンビン省で5日ぶりに無事保護されるという誘拐事件が発生(関連ニュース参照)したが、逮捕された犯人は男の子の両親が経営する店舗のあるデパートに派遣されていた顔見知りの警備員だった。普段、スーパー、銀行などでよく目にする警備員だが、この事件を境に「警備員って・・・本当に大丈夫なの」という素朴な疑問が投げかけられている。
ベトナムの警備員派遣業は今が花盛り。スーパーやマンション、オフィスビルが立ち並び「訓練を受けた専門」警備員の雇用需要は急拡大している。そのため、大手警備員派遣会社から独立し設立された「子」会社、「孫」会社が多数乱立している状況である。さらに、これまでこれらの警備派遣会社から警備員を雇っていたあるカラオケ店チェーンの経営者は、「おいしい」商売だと感じ自ら警備会社を作ってしまったという話もあるぐらい設立ラッシュだ。
最近では、これまで定番だった外資系学校、スーパー、オフィスビルなどでの警備のほかにも、さまざまな警備需要が生まれている。その1つが結婚式での警備だ。これは、浮気が原因で前の妻と別れ、その後新しい若い妻との結婚式を行う時の警備で、前妻が硫酸をあびせるなど「いやがらせ」をする機会は圧倒的にめでたい結婚式の日が高いという事実から警備員の需要が高い。
このほかには、借金取りの際に警備員を雇うケースも多く、そのため需要が増している。借金の返済期日が来ても、金を返さない会社などには、警備員を雇い、朝っぱらから会社の前で睨みを利かせておくためだ。このほか、土地争いでも雇われる。係争中の土地に勝手に住居を建てる行為を防止するため、土地を四六時中監視させるためだ。もし建築資材を持ち込もうとする相手を確実に阻止する役割を果たす。
こんな感じで、警備員といっても「用心棒」としても需要もかなりある。さらに体1つでできる警備員は失業中の若者にとっては格好の職種だ。ある警備派遣会社では、警備技術講習代+仕事紹介料として、警備員志願者から講習料を徴収しているところもある。会社からしてみれば、警備技術訓練費用が浮き、さらに人員確保もできる制度は魅力的なのだ。若者にしてみれば警備訓練さえ受ければ必ず「専門」の警備員として職にありつけることになる。
警備員需要急増の中でおのずと競争も激しくなる。多数の派遣要請があれば訓練途中の警備員を派遣することもあるだろう。このような状況の中、「捕まえてみれば犯人は警備員だった」という盗難事件も多く報告されている。警備員の価値は、我々の生活に危険が及ばないよう警備し、事件を未然に防ぐところにある。しかし既述の事件・実態が実際に明らかになっている事実から、警備派遣会社は今一度管理体制を見直し、自社警備員の悪の芽を事前に摘む努力を怠ってはならないのである。