北中部地方トゥアティエン・フエ省フオンチャー町フオントアン村(xa Huong Toan, thi xa Huong Tra)に暮らすコン・トン・ヌー・チー・フエさん(女性)は、今年で101歳になるが、今でも毎日、伝統工芸を守るために「宮廷枕(goi cung dinh)」を作り続けている。
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フエさんは、グエン(阮)朝(1802~1945年)第2代皇帝ミンマン(明命)帝(在位:1820~1841年)の息子の1人であるミエンラム皇子の孫にあたる。長年にわたり、ザップドン村落(thon Giap Dong)にあるフエさんの自宅は、地元の人々や観光客、特に「宮廷枕」作りの伝統工芸を愛する若者の間で親しまれている。
皇族の末裔であるフエさんは、幼いころから王宮で裁縫と刺繍を学んだ。そして人生の半分以上を「宮廷枕」作りに捧げてきた。「枕」というが、これは長方形のクッションが連なった形で、折り畳んだり開いたりすることができ、本を読んだり、詩を詠んだり、お茶を飲んだりするときに、頭や背中、腕をあずけて使う。かつては皇帝などがよく使っていたことから、「宮廷枕」と呼ばれている。
フエさんは今も毎日、ほぼすべての工程を手作業で行っている。ここ数年は、カバーの縫製は手縫いからミシンに置き換えた。最も難しいのは、連なったクッションを折り畳んだときにきれいに垂直に重なり、ずれたり動いたりしないように調整することだという。
フエさんは、「余力がある限り、この伝統工芸を続け、引き継いでいきますよ。だってそれが喜びであり、生きる理由ですから。義理の娘と孫たちにこの仕事を引き継ぎましたが、まだ7~8点というところですね。まだまだ私の助けが必要ですよ」と語る。
1つの「宮廷枕」を完成させるには、3人で作業をして3日かかる。顧客の要望にもよるが、1個あたりの価格は約180万VND(約1万円)だ。作業にかかる時間の割に利益は大きくないため、トゥアティエン・フエ省で今もこの「宮廷枕」を作り続けているのはフエさん一家くらいだ。
それでも、多くの観光客がここを訪れてお土産に購入するようになったため、「宮廷枕」の存在は以前よりも広く知られるようになった。こうした中、若者たちの中にはSNSを使ってフエさんたちの「宮廷枕」を宣伝し、一家をサポートしている人もいるという。