出稼ぎ労働者が全国で最多の商都ホーチミン市だが、4月末から広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内第4波の影響により、経済活動が深刻なダメージを受けて雇用状況も悪化している。
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工場の操業停止や各種営業施設の閉鎖により失業を余儀なくされた多くの人々が、公共交通機関の運行停止を含む厳しいロックダウン(都市封鎖)が始まったことをきっかけに、この地を脱出して故郷に向かう光景が各地で見られる。
中には、貧しいためバイクがなく、徒歩や自転車で帰省を試みる人々の姿もある。最近、ある一家が自転車2台に乗って、出稼ぎ先の東南部地方ドンナイ省から、約1300kmも離れた北中部地方ゲアン省に向かっている様子が紹介され、国民から同情の声があがっていた。
ボー・タイン・ビンさん(男性・28歳)は、母親(51歳)、姉(30歳)、姪(12歳)の一家4人で5年前にドンナイ省チャンボム郡(huyen Trang Bom)に移り住み、工場労働者として生計を立てていた。しかし、新型コロナの影響で今年4月から全員が失業。
7月9日にドンナイ省がロックダウンされることが決まり、一家はその夜帰省を決意した。手持ちのお金は僅かで、バイクもないが、「ここから脱出しないと、もう生きていけない」と感じたビンさんは自転車での帰省を開始。ビンさんが母を、姉が姪っ子をそれぞれ自転車の後ろに乗せて北へ北へと進んだ。
一家は出発から10日後の昼、ドンナイ省から約300km離れた南中部沿岸地方ニントゥアン省ニンフオック郡フオックザン町(thi tran Phuoc Dan, huyen Ninh Phuoc)の検問所で呼び止められた。事情を聞いた検問所のスタッフは一様に同情し、お金を出し合って一家のために食品や飲料を購入。さらに、インターネットで一家の支援を呼び掛けた。
すると、投稿を読んだ人々から多くの寄付金が集まった。同日午後には地元住民に同省ファンラン市タップチャム駅まで送ってもらい、列車で故郷に向けて出発し21日に到着した。あのまま自転車で北進を続けていたら、あと40日はかかるところを大幅に時間短縮できたことになる。
ビンさんは、「1日約30kmずつ進んでいた。旅の途中で多くの人々から食べ物をおすそ分けしてもらった。検問所では担当者に配慮してもらい、通行を認めてもらった。私たちには自転車があったが、リュックサックを背負って長距離を歩いて帰省する人々もいた。私たち家族は恵まれている」と、感謝の気持ちを述べた。
また11日には、労働者47人が南中部沿岸地方カインホア省を出発し、徒歩で約400km離れた同地方クアンガイ省に向かった。一行は出発地から約50km進んだニンホア村(thi xa Ninh Hoa)で保護され、通報を受けたカインホア省軍事指揮部が車両を動員して、一行を故郷まで送り届けた。