2018年12月1日施行の医療保険法をガイダンスする政令第146号/2018/ND-CPでは、ベトナム社会保険機関(VSS)は2020年1月1日までに医療保険加入者に電子医療保険証を発行しなければならないと規定されているが、2021年3月現在も実現していない。
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電子保険証はICチップを搭載し、樹脂製で現金自動預け払い機(ATM)カードと同じサイズの仕様となり、ICチップには診療履歴を含む加入者の情報を保存する。電子保険証があれば、加入者は診療時に身分証明証を提示する必要がなく、医療機関も本人の診療履歴を確認できるなどのメリットがある。
VSSによると、電子保険証の発行費用は1枚当たり約5万VND(約238円)となり、医療保険加入者9000万人近くに電子保険証を新たに発行するのに、約4兆5000億VND(約214億円)かかると試算される。
また、医療保険加入者全員の個人情報は既にVSSのデータベースに登録されており、医療機関は加入者の保険証の番号を入力するだけで本人の診療履歴などを容易に確認できる環境にある。
VSSは上述の2つを理由として電子医療保険証を発行する必要性はないとし、現行の紙製の保険証を維持する方針を示した。
全国の医療保険加入者数は8650万人で、加入率は88.6%となっている。VSSは2025年までに加入率を95%にまで増やす計画だ。
なお、個人の識別番号として国民に割り当てる12桁の「個人識別番号(マイナンバー)」で国民を管理するICチップの身分証明書に、医療保険証を統合するとの意見もあるが、VSSは国民データベースが構築されるまで医療保険証を廃止することはできないと難色を示す一方、医療保険法の改正の際に改めて提案するとした。