他のどの家族もがそうするように、フオンさん(男性・40歳)とロアンさん(女性・30歳)夫妻は1日の仕事を終えると晩ご飯を食べて子供の世話をして床につく。しかし、他の家族と唯一違うのは、家ではなくバスで暮らしていることだ。
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他のバスの運転手と車掌は、1日の乗務を終えるとバスを清掃して家路へ急ぐ。しかしフオンさん夫妻は乗務を終えたバスこそが家族団らんの場となる。フオンさんは19番のバスの運転手で、ロアンさんは車掌として同じバスに乗務する。
夜19時30分、1日の乗務を終えてベトナム国家大学ホーチミン市校のバスターミナルに帰着すると、ロアンさんは風呂を済ませてから洗濯に出す汚れ物をまとめる。その間にフオンさんがバスの待合室で手早く食事の支度をする。車内を清掃し、フオンさんが風呂を済ませれば20時頃には食事の時間だ。夜はバスの床にござを敷けば寝床になる。
クリスマスに生まれた5歳の息子ノエルくんはこのバスで生まれ育った。平日は父方の祖母の家で留守番するが、学校が休みになる週末は両親の仕事にお供する。
生活は決して楽ではないが、フオンさん夫妻は可愛い我が子のために汗水流して働き、夜は車内で家族水入らずで過ごす時間が至福の時だ。