ベトナム版ギネスブックとして知られるベトナム・ブック・オブ・レコードはこのほど、南中部沿岸地方クアンナム省ホイアン市在住のグエン・ドゥオンさん(83歳)を、「国内で最も長い期間井戸水配達を続けている人」に認定した。
(C)Thanh nien,Hoang Son、ドゥオンさん夫妻 |
ドゥオンさん夫妻は50年ほど前に、ホイアン旧市街の路地で井戸の水を各家庭へ届ける仕事を始めた。天秤棒の両側に2つのバケツをかついで歩く昔ながらのスタイルだ。「バーレー井戸」と呼ばれているこの井戸の水はおいしいという評判が立ち、レストランやカフェ、ホテルなどへも届けるようになった。
ドゥオンさんの長年の顧客の1人は、家に水道があるにもかかわらず、飲むのはバーレーの井戸水と決めている。お茶を入れる時の香りや味が井戸水と水道水では全く違うのだという。また、ホイアンの名物料理カオラウ(伊勢うどんがルーツといわれる麺)やホワイトローズ(バインバオバック、米粉の蒸した皮にエビのすり身と揚げタマネギを載せたもの)はこの井戸の水を使わないと独特の風味が出ないといわれている。
バーレー井戸がいつ掘られたのか、はっきりしたことは分かっていない。100年余り前のフランス植民地時代に、裕福な家庭の女性が私費を投じて井戸を掘ったと伝えられており、「バーレー」はその女性の名前だとされる。
ファンチューチン通り30番地の路地の住人は、外国人観光客がドゥオンさんにカメラを向ける姿を見ることにすっかり慣れた。国内外の新聞や雑誌で何度も紹介されており、ドゥオンさんの小さな家の壁には、カメラマンや観光客から贈られた写真が所狭しと飾られている。