ハイフォン水産造船株式会社が所有するタンカー「サンライズ689号」がシンガポール沖で2日以降消息を絶っていた事件で、1週間が経過した9日午前5時30分ごろ、同タンカーの船長グエン・クエット・タンさん(男性・33歳)から同社に乗組員18人全員無事との連絡が入った。
(C) vnexpress 海賊に乗っ取られていた「サンライズ689号」 |
(C) vnexpress 乗組員の親族ら |
タンさんの話によると、同タンカーは2日以降、高速船1隻と漁船2隻に乗り、銃と刃物で武装したインドネシア人らしき海賊約10人に乗っ取られていたという。海賊は同タンカーを乗っ取った後、乗組員たちを軟禁してカンボジアとタイに近い海域へ同タンカーを移動させ、積載していた石油の3分の1を奪った。同タンカーの乗組員らは海賊から暴力を受け、2人が足を骨折したが全員無事だった。
海賊は9日午前1時ごろ、前部にマレーシア国旗、後部にベトナム国旗を掲げた漁船「KNF7858号」に乗り、サンライズ689号を後にしたという。海賊により全ての通信設備が破壊されたため、タンさんは羅針盤で方向を見定め、ベトナム海域へ向かって同タンカーを操縦し、通信電波が確認できた同日午前5時30分、携帯電話で会社に連絡を入れた。同タンカーは現在、ベトナムの漁船と海上警察の巡視船の支援を受けて航行を続けており、10日にもベトナム本土へ到着する見通しだ。なお、タンさんの妻によると、タンさんは以前にもカリブ海で海賊に襲われたことがあり、8か月間軟禁されていたという。
同タンカーは2日、石油5200tを積んでシンガポールのホライズン港を出港し、同日午後18時ごろ国際海域に出てベトナム北中部クアンチ省へ向かっていた。しかし出港からわずか40分後の18時40分、シンガポールから115カイリ、ベトナム東南部バリア・ブンタウ省コンダオ島から360カイリ離れた地点で消息を絶った。
同海域の天候に乱れもなく荒波もなかったこと、また同タンカーの最終確認地点がシンガポールからベトナムへ向かう航路から外れていた上、武装した海賊が横行している海域(シンガポールとインドネシアの境)に近かったことから、海賊に襲撃されたものと見て直ちに海上警察並びに海上国境警備隊が出動し、同タンカーの行方を追うと共に、捜索救難活動に当たっていた。また、ベトナム当局はアジア海上治安海賊防止センター(RECCAP)をはじめ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、カンボジアなど周辺諸国へも支援を要請していた。